01 | 小規模オフィスの定義とは何か?
小規模オフィスの魅力的なレイアウト術|
デザインの秘訣を紹介作成日:2024.5.9更新日:
この記事では、小規模でも効率的に機能するオフィススペースを実現するための、レイアウトとデザインのテクニックをご紹介します。
特に小規模オフィスには、内装にかかる費用を抑えつつ、細部にこだわったデザインで統一感を出しやすいという特長があります。
限られたスペースを賢く活用し、生産的で快適に働ける場所に変えるために、この記事で小規模オフィスのデザインのポイントや注意点をご確認ください。
コラムの目次
02 | 小規模オフィスのおしゃれなデザインの秘訣
03 | 小規模オフィスをレイアウトするメリット
04 | 小規模オフィスのレイアウトにおける注意点
05 | 壁や天井を活かした収納アイディア
06 | 小規模オフィスに関するまとめ
07 | 小規模オフィスに関するよくある質問
小規模オフィスの定義とは何か?
まず、オフィスの大きさは会社の規模や従業員数、業態によって幅があるため、一概に「何坪までが小規模」という決まりがあるわけではありません。
一般的には、50坪未満のオフィスが「小規模オフィス」に分類されます。5~25坪のオフィスを指して、「超小型オフィス」と呼ぶこともあります。
一人当たりの床面積を3~4坪と考えると、50坪のオフィスでは15名前後の従業員が働くのに適しています。30坪以下のオフィスなら、5~10名程度が常駐する人数の目安となります。
また、ビルの規模でいうと、延床面積が1,000坪未満の場合は小規模、1,000坪~3,000坪未満の場合は中規模、3,000坪以上は大規模ビルに分類されるのが定説となっています。
小規模オフィスの形態としては、通常の賃貸オフィス以外に、レンタルオフィスやシェアオフィスも選択肢に上がります。家具付きの専有スペースを、短期かつ小規模で利用できるため、フレキシブルにオフィスを使いたい企業から注目されています。
近年は、不動産会社が大型のオフィスビル を改装し、小規模のオフィスやシェアオフィスとして貸し出す動きが広がりを見せています。中小企業やスタートアップ企業、コロナ禍でオフィスを縮小した大企業などが、こうした小規模オフィスを利用するケースも増加しています。
小規模オフィスのおしゃれなデザインの秘訣
小規模オフィスでは、限られたスペースだからこそ、デザインやレイアウトが空間づくりの鍵となります。
小規模だからこそ、色やテイストの統一がしやすく、細部にこだわりのあるオフィスを作りやすいのが特長です。また、家具の配置や動線によっても、部屋が与える印象が大きく変わってくるため、広さを感じさせるレイアウトを選びたいところです。
ここでは、デザイン性と機能性を両立したオフィスを実現するために、小規模オフィスのデザインで意識したいポイントを紹介します。
デザインのコンセプトを決める
オフィスデザインを計画する初めの一歩は、「デザインのコンセプト」の決定です。
そのオフィスが目指す役割を考えてみましょう。「社員が意見を活発に交換できる場」「リフレッシュに適した空間」など、オフィスに何を期待するかによって、デザインのテイストやレイアウトが変わってきます。
また、オフィスのデザインは、企業のイメージやブランディングを左右する要素です。温かみのある社風、スタイリッシュで先進的なムード、自由闊達で風通しのよい企業体質など、従業員や顧客に与える印象を想定しながら、自社の魅力を表現するようなデザインにしたいものです。
企業理念をアピールするともに、採用や従業員満足度の面でもメリットのあるオフィスを作るためには、必要に応じて社外のプロの力も借りながら、デザインのコンセプトを決めるとよいでしょう。
会社の業態に適したコンセプトを考える
デザインのコンセプトには、何を重視するかも含まれています。オフィスが与えるイメージだけでなく、使い方や目的を明確にしておくことで、本当に使いやすいオフィスに必要な条件を揃えることができるでしょう。
例えば、社員の働き方を考えてみましょう。内勤の社員が多い会社であれば、十分な執務スペースや、小さな会議室を複数用意するとよいでしょう。
反対に、営業などで外勤の社員が多かったり、リモートワークとの併用で出社する人数がまちまちだったりする会社なら、自由に使いやすいフリーアドレスのデスクを設けることで、出入りしやすくスペースを有効活用できるオフィスとなるでしょう。 社内用の会議室の代わりに、オープンな会議テーブルを用い、休憩用や昼食用のスペースと兼用するという方法も考えられます。
また、セミナーなどで来客の多い会社なら、来客スペースに比重を置いて、執務スペースは最低限にとどめてもよいかもしれません。
このように、会社の業態や、オフィスに期待する目的によって、オフィスのレイアウトは大きく変わります。ご自身の会社の働き方に合ったオフィスのかたちを、デザインのコンセプトを決める段階で明らかにしておきましょう。
ゾーニングを検討する
20坪以上の広さがあるオフィスは、スペースを用途別に分ける「ゾーニング」によって、より快適に働きやすい空間となる可能性が高いです。
ゾーニングとは、空間を用途別に区分し、適切な位置に配置することを指す言葉です。例えば、休憩スペース、執務スペース、共用スペースなど、必要なスペースを洗い出し、面積や配置を決めていく作業がこれにあたります。
必ずしも、各スペースが壁で仕切られている必要はありません。
例えば、執務スペースと一続きで、会話のできる共有ラウンジやロッカースペースを用意してもよいでしょう。しかし、情報セキュリティの観点から、会議室や応接室としては、扉付きの個室や間仕切りを用いた半個室を用意するのが一般的です。
ゾーニングで各スペースの配置を考えるときに、重要なのは使い勝手のよい動線を意識することです。インターネット周辺機器、ウォーターサーバー、シュレッダー、複合機など、必要な備品を洗い出し、作業効率を高められる最適な動線を設計しましょう。
小規模オフィスのゾーニングのポイント
限られた面積を有効に活用するために、一つのスペースに複数の機能を持たせることも、小規模オフィスのゾーニングを考えるときのポイントになります。
例えば、打ち合わせ室と応接室を兼ねる個室を作ったり、パーテーションにもなる収納家具(間仕切り収納)を取り入れたりと、同じ面積を2つ以上の用途に活用できる方法を工夫してみるとよいでしょう。
小規模オフィスの限られたスペースの中で、理想のオフィスの条件を全て叶えることはできないかもしれません。優先順位を付け、こだわるべきポイントを決めてゾーニングを考えることをおすすめします。
小規模オフィスの通路幅の目安
ゾーニングを考えるうえでは、各スペースの配置を決めるだけでなく、無駄のない動線を意識して、通路の幅や配置を決める必要があります。動線とは、室内を人が自然に動く際に通る経路のこと。エントランスから自席まで自然に移動でき、そしてロッカーやコピー機、備品などを使いやすい動線を考える必要があります。
「執務スペース」や「休憩室」などは、特定の用途を持つゾーンとして、すぐに頭に浮かぶことと思います。しかし、忘れてはいけないのが通路です。ゾーン同士をつなぐ通路もまた、「通路ゾーン」ともいうべきゾーンの一つなのです。
必要な通路幅の目安は、以下のようになっています。
双方向から人が行きかうような通路であれば、ゆとりを持って150cm程度の通路を確保したいものです。
また、座席同士が背を向け合っていたり、座席の背面が壁になっていたりするようなレイアウトの場合、座席にまつわる通路幅の目安は以下のようになります。
まず、従業員一人が座席に座ったときの奥行きは、50cmが目安です。背を向けた座席同士の間を通る場合は、50×2+60cmで、160cm以上あれば人が1人通れる広さになります。
また、座席の背が壁に面している場合は、その後ろを通れるだけの広さを考える必要があります。座席の奥行きを50cmと考えると、その後ろを人が1人通れる110cm以上が通路幅の目安になります。
家具や内装のトーンを
揃えて統一感を意識する
小規模だからこそ、オフィス全体のテーマを統一しやすい一方で、何も考えずに家具や小物を選んでしまうと、雑然として集中しにくい部屋になることも。家具の素材や色に統一感を持たせ、すっきりとした内装を整えたいところです。
カーテンや壁紙、カーペットなど、面積の広い部分はできるだけ色を統一するために、最初にテーマカラーを決めておくとよいでしょう。 最初に決めたデザインのコンセプトに基づいて、クールで洗練された印象ならグレーや黒といった寒色系、アットホームで和やかな印象ならベージュやクリーム色といった暖色系など、イメージに合った色を考えていきます。
また、会社のコーポレートカラーやロゴマークを内装に取り入れることもできます。
家具も同様に、デザインのコンセプトに沿ったテイストのものを選びましょう。同じブランドやシリーズの家具で揃えたり、色味や材質を近づけたりすることで、一体感のあるオフィスとなるでしょう。
小規模オフィスは家具や内装にこだわりやすい
小規模オフィスには、少し手を入れるだけでもオフィスの雰囲気が変わり、こだわりの空間を作りやすいという特長があります。
家具の点数が少なく、内装工事の規模も小さくて済む小規模オフィスでは、ぜひ家具の質や機能性にこだわってみてください。
例えば、長時間座っても疲れにくい高性能チェアを取り入れれば、社員満足度や作業効率の向上が期待できます。大規模なオフィスでは実現できないような、細部まで完成度の高いオフィスを実現しましょう。
空間が広く感じるレイアウトを意識する
小規模オフィスでも、レイアウト次第で広々と開放感のある印象を与えることができます。
エントランスからオフィスに入ったときに、視界を遮る障害物はありませんか? 例えば、部屋の中央がパーテーションで区切られていて向こう側が見えないような場合は、窮屈な印象を与えてしまいます。
低めの家具を選んだり、ガラス製のパーテーションなどで見通しをよくしたりすることで、部屋の奥まで見渡せるため、広々とした印象を与えることができます。
また、ホワイトやアイボリーなどの白っぽい色や、色味の淡いパステルカラーは、部屋を広く見せる効果があります。壁や家具の色のトーンを統一し、天井に向かって明るくなっていくようなイメージで配置してみてください。小規模なオフィスでも圧迫感を与えず、空間に広がりを持たせることができます。
小規模オフィスをレイアウトするメリット
小規模の物件をオフィスにしようとする場合には、限られたスペースを有効活用しなくてはいけません。
しかし、小規模オフィスだからこそのメリットもあります。ここでは、小規模オフィスをレイアウトするメリットを3つご紹介します。
レイアウトの自由度が高い
大規模なオフィスと比べて、レイアウトの自由度が高いのが小規模オフィスの特長です。
例えば、大規模なオフィスのレイアウトを一新しようと思うと、かなりの時間と費用がかかります。オフィス全体に統一感を持たせるにも、家具や家電、壁紙やカーペットなど、内装のイメージを全て揃えるのは難しいものです。
一方で、小規模のオフィスであれば、少しの変化でも大きくオフィスの雰囲気を変えられます。家具や家電の点数が少なく、壁紙・カーペットの範囲も狭くなるため、全体の統一感を意識してインテリアにこだわることもできます。
費用を抑えることができる
小規模オフィスでは、大規模オフィスに比べると、初期費用やランニングコストを大幅に抑えられます。
初期費用としては、家具や家電、備品の購入費用、インターネット回線などのインフラや内装の工事費用などが挙げられます。これらの費用は、もちろんオフィスの規模が小さいほど、金額も少なくて済みます。
また、オフィスのランニングコストには、毎月の賃料や、水道光熱費、通信費、消耗品費や、定期的な清掃にかかる費用などがあります。
このような維持費も同様に、オフィスのサイズによって変動するため、小規模オフィスでは初期費用・ランニングコストともに抑えられるでしょう。
社内のコミュニケーションが活性化する
大規模なオフィスだと、自分の部署の人としか顔を合わせなかったり、同じ空間にいない人に声をかけにくく、チャットやメールで連絡するしかなかったりすることがあります。
一方で、小規模のオフィスでは社員同士の物理的な距離が近く、活発に会話が生まれやすいという特長があります。「席を立って少し話を聞く」といったことができるため、オープンなコミュニケーションが生まれやすくなります。進捗報告や相談など、ちょっとした社員同士の連携がしやすい環境となるでしょう。
小規模オフィスのレイアウトにおける注意点
小規模オフィスのレイアウトを考えるうえで、知っておくべき注意点をご紹介します。
増員を考慮してのレイアウトを意識する
企業の発展に伴い、ゆくゆくは従業員の数が増えることも考えられます。
そんなとき、新しい社員が働けるスペースが足りないことになると、事業計画にも関わってくるでしょう。当初から、増員にも対応できるようなレイアウトを考えておくことをおすすめします。
例えば、可動式のデスクや家具を選ぶことで、急なレイアウトの変更にも対応できます。大きな家具は、地震対策で壁や床に打ち込み、動かせなくなることもありますので、中長期的に影響の少ないレイアウトを考えたいところです。
また、一度壁を増設すると、オフィス内のゾーニングを変えにくくなります。社内のレイアウトが変更になる可能性がある場合は、動かせるパーテーションで室内のスペースを分けるなど、可変的な内装づくりを意識するとよいでしょう。
パーソナルスペースを意識する
小規模オフィスを快適に働ける空間にするためには、従業員のパーソナルスペースの確保を考える必要があります。
小規模オフィスのネックは、一人一人のワークスペースを十分な広さで確保しにくいこと。 社員同士の席が近すぎたり、密集して作業するような状態になったりすると、物理的にも気持ちの面でも、落ち着いて作業できない環境になるかもしれません。
小規模オフィスでも、十分なスペースを確保する方法としては、例えばフリーアドレスの導入があります。フリーアドレスとは、固定の席が決まっておらず、好きな席に座って作業できるオフィスのことです。固定席を確保する必要がないため、使っていないデスクでオフィスの面積を使うことがなくなるでしょう。
並行して、リモートワークやABWといった働き方を取り入れることで、さらにオフィスの広さを有効活用できます。ABWとは、Activity Based Workingの略で、その日ごとに働く場所を自由に決められる仕組みのこと。オフィスへの出社人数を減らし、必要な場合のみオフィスに出社する制度を作ることで、限られたスペースを快適に使えるようになります。
従業員一人当たりのオフィスの広さ
法律の規則で定められている、従業員一人当たりの最低限の広さは「10m³以上」です。仮に、オフィスの天井の高さを2.5mとした場合、一人当たりの坪数は約1.2坪となります。
しかし、これはあくまで、法律で決められた最低限の広さです。快適に働けるスペースを確保するには、一般的には従業員一人当たり、3坪程度の面積が必要とされています。4~5坪になるとゆったりと空間を使え、反対に3坪を下回るオフィスは、少し窮屈な印象を与えます。
音のストレスに配慮する
小規模だからこそ、室内の音のストレスには配慮が必要です。
例えば、誰かがいつも電話をかけていて、その声で集中力が落ちてしまうのは望ましくないでしょう。Web会議などで、周囲への音漏れが気になって大きな声を出せないというのも本末転倒です。 遮音性や吸音性の高いパネルで囲まれた「集中ブース」を設け、Web会議や電話に使える空間として活用することで、プライバシーの観点からのメリットも生まれます。
また、オフィス内にトイレがある場合は、トイレと作業スペースの間に収納を置いたり、トイレ用の擬音装置を設置したりすることで、スペースが小さいことによる音のストレスを低減することができます。
壁や天井を活かした
収納アイディア
小規模オフィスでは、床面積が限られているため、たくさんの収納を置いてしまうと窮屈になってしまうかもしれません。そこで、床の面積を使わずに収納を増やせるのが、壁を活かした収納です。
例えば、収納家具を壁に見立てて、パーテーションのように使うことができます。天井までの高さがある必要はなく、ロータイプの本棚やキャビネットで緩やかにスペースを区切ってもよいでしょう。向こう側が見えるような背板のない本棚なら、視界を完全に遮らず、室内の抜け感や開放感をキープできます。
壁に棚を取り付けたり、天井から吊り収納を下げたりすることでも、床面積を使わずに収納スペースを作ることができるでしょう。
また、観葉植物を取り入れたいが、床に置くスペースがないということもあります。そんなときは、天井や壁を利用した「天井緑化」や「壁面緑化」によって、緑ある空間を実現できます。
ペーパーレス化で収納の量を減らす
小規模オフィスでは、スペースの有効活用が重要になります。収納ばかりでワークスペースが減ってしまうことを避けるために、そもそもの収納の量を見直してみましょう。
その有効な方法が、書類のペーパーレス化です。請求書や契約書、会議資料や販促物など、必ずしも紙媒体で残す必要がない書類は、電子化して保管するのも一つの方法です。ファイルサーバーやクラウドストレージなど、保管場所やルールを社内で周知することで、印刷にかかるコストも減らすことができます。
ペーパーレス化によって、リモートワークなどの多様な働き方を取り入れやすくなるというメリットもあります。どうしても原本の保管が必要な書類は、限られた共有書庫などに格納することで、むやみに紙の資料が増えないようにしていきましょう。
小規模オフィスに
関するまとめ
ここまで、小規模オフィスのデザインの秘訣や、メリットと注意点をご紹介しました。
小規模オフィスは、レイアウトの自由度が高いことや、少しのコストで完成度の高いオフィスを作りやすい点がメリットです。また、社員同士の物理的な距離が近いため、コミュニケーションが活性化しやすいという特長もあります。
注意点としては、増員に対応できるようなレイアウトにすべきことや、十分な作業スペースを確保しなくてはいけない点が挙げられます。また、音のトラブルが起きないように、静音効果のある集中スペースを設けたり、トイレの音に配慮したりするとよいでしょう。
近年は、リモートワークの普及により、オフィスの移転や縮小が増加しています。既存のオフィスを解約し、社員同士のネットワークづくりやコミュニケーションの場として、小規模オフィスを借りるリモート主体の企業も増えています。
ご自身の業態や事業方針に合ったサイズのオフィスを選ぶとともに、小規模オフィスへの入居を考える際は、ぜひ本記事で得た知識をご活用いただければと思います。
小規模オフィスに関する
よくある質問
小規模オフィスを広く見せるために、内装で工夫できることはありますか?
膨張色である白などの明るい色を使い、小さめの家具を中心に選ぶことで、空間に広々とした印象が生まれます。また、床材を一種類にするのではなく、スペースによって「木目調」と「カーペット」を分けるなど、ミックスすることで部屋全体にメリハリが生まれるでしょう。
小規模オフィスの賃料の相場は低いですか?
賃料は立地や広さによって変わるため、似通った条件のオフィスであれば、規模が小さいほど賃料が低くなりやすいです。周辺の家賃相場を調査し、適正な賃料のオフィスを選びましょう。相場よりも賃料が高い場合は、賃料の交渉に応じてもらえる場合もあります。