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新耐震基準とは?旧耐震基準との違いを徹底解説

作成日:2024.5.9更新日:

「新耐震基準」という言葉を耳にしたことはありますか?

1981年(昭和56年)、耐震基準の見直しが行われ、それ以降の耐震基準は「新耐震基準」と呼ばれるようになりました。改正前の「旧耐震基準」から変わったポイントや、耐震基準と耐震等級の意味の違いなど、この記事で物件の耐震性についての知識を深めていきましょう。

そもそも耐震基準とは?

耐震基準とは、地震から人や建物を守るための基準です。床面積に対する壁の量やバランス、接合部の強度、床の硬さや地盤に適した基礎構造などについての基準が、建築基準法で設けられています。

この耐震基準の歴史は、いつから始まったのでしょうか。

1920年に、建築基準法の元となる市街地建設物法が施行され、1924年の改正で初めて、耐震基準が定められました。1950年には、建築基準法が制定され、数回の改正を経て、現在の耐震基準に至ります。

地震の多い日本で安心、安全に暮らすために守らなくてはいけないのが、建築基準法で決められた耐震基準です。新たに住宅を建てるときは、必ず最新の耐震基準を満たす必要があります。

ビジネスマン

旧耐震基準と新耐震基準の違いとは?

建築基準法は何度か改正されていますが、特に大きな改正のタイミングが、1981年の改正です。

この改正により、1981年6月1日から施行された耐震基準は「新耐震基準」と呼ばれることになりました。一方で、1981年5月31日までの耐震基準は「旧耐震基準」と呼ばれ、耐震診断で強度が足りない場合は、耐震補強工事を行う必要があります。

なお、1981年以降では2000年にも大きな改正が行われており、それ以降の基準が「2000年基準」と呼ばれることもあります。しかし、この2000年の改正は主に木造住宅に関するもので、鉄筋コンクリート造の建物の耐震基準は、新耐震基準ができてから大きな変更はありません。

ここでは、「旧耐震基準」「新耐震基準」「2000年基準」というそれぞれの耐震基準について、比較しながら解説します。

比較している人形

旧耐震基準について

旧耐震基準とは、1981年5月31日以前の、法改正が起きる以前の耐震基準のこと。これ以降の建物は、新耐震基準が適用されているため、耐震性が上がった地震に強い物件となっています。

しかし、1981年5月以前に建てられた建物の中には、現在もまだ、新耐震基準を満たしていないものが残っています。耐震改修促進法によって、旧耐震基準に基づいて建てられた建物は耐震診断を受けることが義務化されているのですが、それでも新耐震基準を満たしていない建物や住宅が残されているため注意が必要です。

なお、耐震基準はあくまでも、最低限クリアすべき基準を定めたものです。つまり、旧耐震基準の時代に建てられた住宅でも、新耐震基準を満たす場合があるのです。耐震診断の結果、十分に耐震性があると判断された場合は、耐震補強工事を行う必要がないこともあり得ます。

どのくらいの地震に耐えられるのか

旧耐震基準を満たしている建物は、震度5強程度の中規模の地震には耐えられる想定で設計されています。

震度5強程度の地震に耐えられるとはいえ、その基準は「震度5強程度の揺れでも建物が倒壊しないこと」。倒壊はしないとしても、大きな損傷が起きるリスクは残されています。また、震度6強や震度7などの、大規模な地震には耐えられない可能性が高いです。

新耐震基準が施行されてから数年後の1995年、阪神・淡路大震災が発生し、神戸市の一部の地域で震度7が記録されました。この地震では、建築物等の倒壊によって大きな被害が出ましたが、倒壊した建物の多くは新耐震基準を満たしていない、1981年5月以前の建物でした。この事態を受け、行政を中心とした耐震化の促進がいまも続けられています。

新耐震基準について

新耐震基準とは、1981年6月1日に施行された、地震に強い建物を作るための基準です。1981年6月以降に建築確認された建物には、この基準が適用されています。

1981年に建築基準法が大きく改正された理由としては、1978年に起きた宮城県沖地震の被害を受けたものだといわれています。震度5の地震によって、住宅の全半壊が約4,400戸、一部損壊が約86,000戸という甚大な被害が生じました。これにより、震度6強~震度7程度の大きな地震でも耐えられるような新基準が施行されることになりました。

全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」を利用する際にも耐震性が問われ、「新耐震基準を満たすこと」が条件になっています。旧耐震基準の建物の場合は、耐震基準適合証明書により、新耐震基準に適合していることを証明する必要があります。

どのくらいの地震に耐えられるのか

新耐震基準は、震度5強程度の地震ではほとんど損傷がなく、震度6強~震度7程度の大規模の地震でも、建物が倒壊しないような耐震性を定めた基準です。

具体的には、安全性を確認するための計算の仕組みや、地震力の計算方法が見直されました。また、木造、鉄筋コンクリート造、補強コンクリートブロック塀等の仕様規定といった内容も強化されました。

2000年基準について

新耐震基準の導入後も、地震による建築物の被害が発生していることから、建築基準法の細かな改正が行われています。

2000年にも、比較的大きな改正が行われたことから、それ以降の耐震基準を「2000年基準」と呼ぶこともあります。2000年6月1日以降に建築確認が行われた建物に適用されています。

2000年基準は、木造住宅をターゲットとして制定された基準です。地盤の強度に合わせた基礎構造を用いることや、接合部の金物の種類、耐力壁の配置のバランスなどが規定されました。

建物を建築する場合は、そのときどきの最新の耐震基準を満たしている必要があります。1981年6月以降の新耐震基準を満たしている物件でも、木造住宅の場合はリフォーム等の機会に「2000年基準」に適合させることが推奨されています。

なお、例えばエレベーターの耐震基準は、2014年に施行されたものが最新です。最新の基準を満たしていないエレベーターは「既存不適格」と呼ばれ、改修の際に、現行の耐震基準を満たすことが求められています。

物件の耐震基準を調べる方法

これから新築や増改築する建物であれば、新耐震基準の建物となるため、耐震性についての大きな心配はないでしょう。

しかし、例えば中古マンションやアパート、一軒家などを賃貸、あるいは購入するときに、その物件が1981年以前に建てられたものであれば、耐震性が気になるところです。

マンションのような鉄筋コンクリート造の建物の法定耐用年数は、47年。しかし、メンテナンスを適正にしていれば、マンションの本来の寿命は100年ともいわれます。築40年を超える物件を検討する際は、必ず耐震性を確かめておきましょう。

ここでは、物件が新耐震基準を満たしているのか、耐震基準を調べたいときの確認方法をご紹介します。

建築確認日をチェック

新耐震基準で建てられているか、旧耐震基準で建てられているかは、1981年5月31日以前の建物か、同年6月1日以降の建物かで判断されます。

ですから、築40年以内の物件であれば、基本的に新耐震基準に即しています。しかし、起点になるのは「着工日」「竣工日」「築年月日」ではなく、「建築確認日」となる点にご注意ください。

基準となるのは、「建築確認」が行われ、証明書が発行された日付です。建築確認とは、建物や地盤が建築基準法や各市町村の条例などに適合しているか、確認する手続きのことです。その中で、耐震基準を満たしているかもチェックされます。

ですから、建物の竣工日ではなく、建築確認された日を確認することで、適用されている耐震基準を調べられます。建築確認日は、建築確認通知書に記載されています。

耐震診断を受ける

中古物件の購入時などに、受けておきたいのが「耐震診断」です。

旧耐震基準の住宅でも、現行の耐震基準を満たしている可能性があります。あるいは、耐震基準を満たしていない場合は、耐震工事を考えなくてはいけません。

現行の耐震基準を満たしているかを確認するための方法が、プロの手を借りての「耐震診断」です。 現行の耐震基準を満たしている場合は「耐震基準適合証明書」が発行されます。

耐震診断にかかる費用は、物件の構造や広さ、立地によって異なります。例えば、木造の一戸建てで、延床面積が120㎡程度の場合、費用の相場は20~50万円ほど。耐震診断や耐震補強工事に補助金が出る地域もあるので、各自治体の制度を確認してみましょう。

一時的な費用はかかるものの、耐震基準適合証明書があれば、住宅ローン控除、登録免許税の軽減、不動産所得税の軽減などの各種減税や、金融機関からの融資を受けられる可能性が高まります。また、耐震補強が必要な場合は、補強工事の提案や、改修工事まで実施してくれる業者もあります。

そのほか、証明書があることで売り手がつきやすくなるため、中古物件を売却する前に耐震診断を受けることもあるでしょう。「相続した家に安心して住みたい」といった理由で耐震診断を受ける方もいらっしゃいます。

建物の耐震等級とは?

耐震基準とは別に、「耐震等級」という考え方もあります。耐震等級は、地震に対する建物の強さを表す指標で、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が定める「住宅性能表示制度」に基づく基準です。

耐震設計

耐震基準との違い

一見すると、耐震基準とよく似た基準のようですが、どこに違いがあるのでしょうか?

耐震基準は、地震から建物内の人命を守ることに主眼を置いた基準です。一方で、耐震等級は人命だけでなく、建物自体を守ることも目的として定められています。

また、耐震基準を満たしていないと「違法建築」となり、建築確認で認められません。建物を新築、あるいは一定以上の増改築をする際は、必ず建築確認申請をして、現行の耐震基準を満たす必要があります。

それに対して、耐震基準を満たしているという前提のうえで、さらに強い耐震性があるかのレベルを図るのが耐震等級です。耐震基準が高いほど、地震に強い建物や住宅として認められることになります。ただし、任意の制度のため、必ず耐震等級の認定を受ける必要はありません。

耐震等級は3段階に分けられている

耐震等級は、3段階に分けられています。

    耐震等級1:建築基準法レベルで最低限クリアすべき強度

    耐震等級2:耐震等級1の1.25倍の強度

    耐震等級3:耐震等級1の1.5倍の力の強度

耐震等級を上げるには、コストがかかるなどのデメリットがあります。しかし、その分、地震保険料が割り引かれるというメリットも。なにより、耐震等級が上がるほど、地震に強く安心できる建物となるでしょう。

耐震等級1~3のそれぞれの強度について、以下で詳しくご説明します。

耐震等級1

まず、耐震等級1の物件は、建築基準法レベルで最低限クリアすべき強度を持っています。

つまり、現行の耐震基準と同等の耐震性があるということです。 震度5強程度の地震ではほとんど損傷せず、震度6強~震度7の地震に対しては、倒壊はしないものの一定の損傷を受けることが想定されます。

例えば、マンションなどの共同住宅は、耐震等級1の建物が比較的多い傾向にあります。

耐震等級2

次に、耐震等級2の物件は、耐震等級1の1.25倍の強度を持っています。

法律で決められている耐震基準は、あくまでも「最低限の基準」です。

耐震等級2になると、耐震基準を上回る強度を持つことになり、耐震性の面では「長期優良住宅」の要件を満たします。そのほか、省エネルギー性やバリアフリー性、劣化対策などの基準を満たすと、長期的に良好な状態で住める住宅として、「長期優良住宅」の認定を受けることができます。

災害時の避難場所となるような、学校、病院などの公共施設は、耐震等級2以上の耐震性を備えている必要があります。 耐震等級2の建物は十分な耐震性を持っているため、安心して長く住むことができるでしょう。

耐震等級3

最も高い安全性を誇るのが、耐震等級3の建物です。耐震等級3の物件は、耐震等級1の1.5倍の力の強度を持ちます。数百年に一度程度の、極めて稀に発生する規模の地震でも、崩壊・倒壊しないレベルの強度とされています。

災害時の救護活動や、災害復興の拠点となる消防署、警察署などは、その多くが耐震等級3で設計されています。震度6強~震度7程度の地震でも、軽い補修で住み続けられるレベルの強度と考えられています。

物件の耐震等級を調べる方法

最低限の耐震基準を上回る、高い耐震等級の物件を購入、賃貸したいという方もいることでしょう。

では、物件の耐震等級はどこで調べられるのでしょうか。

住宅性能評価書を確認

耐震等級の調べ方は、「住宅性能評価書」という書面を確認することです。

住宅性能評価書とは、第三者機関が住宅の性能を評価し、その結果を記載した書面です。 耐震等級のほか、火災に対する安全性や、耐久性、省エネルギー対策など、住宅の性能を示す10項目が評価されます。

物件を建築する場合は、建築会社と相談して、住宅の耐震等級を決めることができます。ただし、正式に耐震等級の認定を受けるときは、やはり住宅性能評価書が必要になります。

分譲住宅や中古物件を購入したり、物件を賃貸したりする際も、住宅性能評価書を見ることで、初心者でも分かりやすく住宅の機能性を確認できるでしょう。

安心して住める物件を選ぶには

地震の多い日本では、耐震性の高い物件を選ぶことは、安心して暮らすために不可欠といっても過言ではありません。

ここでは、安心して住める物件を選ぶために、確認すべきポイントをご紹介します。

耐震

建築確認日を確認する

建物の耐震性を大きく左右するのが、「旧耐震基準」と「新耐震基準」のどちらに適合しているかです。

過去の大地震の際に、旧耐震基準時代の住宅が、大きな被害を被った前例は一つではありません。建築確認日が1981年6月1日以降であれば、新耐震基準を満たしている建物であることが分かるので、建築確認通知書で「いつ建築確認されたのか」を調べてみてください。

耐震基準適合証明書を確認する

旧耐震基準時代の物件でも、現行の耐震基準を満たしていれば問題はありません。

1981年5月31日以前に建築確認を受けた物件は、建築診断を受ける必要があります。この診断の結果として、耐震基準を証明するために発行されるのが、耐震基準適合証明書です。

1981年の法改正以前に建てられた物件でも、耐震基準適合証明書があれば、住宅ローンの控除制度を利用できる場合もあります。

ただし、築年数が数十年以上の物件は、診断を受けても、この耐震基準を満たさないことが少なくありません。その場合は、現行の耐震基準を満たすべく、耐震補強の工事を考える必要があります。

住宅ローン控除などの要件を確認する

中古で物件を購入する際に、住宅ローン控除などの現前制度を利用したり、住宅ローン「フラット35」を利用したりしたいという方もいます。

そんなとき、新耐震基準が適用されていない築年数の物件の場合は、各種制度が利用できない可能性があります。一方で、耐震診断を受けて「耐震基準適合証明書」を提出することで、十分な耐震性があることを証明できれば、減税や「フラット35」などの制度を利用できるかもしれません。

ご自身が利用したい制度を調べ、購入しようとする物件が、その要件を満たしているのかを確認しておきましょう。耐震性が関わってくる主な制度には、住宅ローン「フラット35」や、住宅ローン控除、登録免許税の軽減、不動産所得税の軽減など、さまざまな減税制度が挙げられます。

例えば、中古住宅の購入で住宅ローン控除を受けるためには、耐震性についての要件を満たす必要があります。1981年以前に建築された物件を購入する場合は、以下のいずれかの書類がないと、原則として住宅ローンの控除を受けることはできません。

耐震基準適合証明書

建設住宅性能評価書

既存住宅売買瑕疵保険付保証明書

各種制度のメリットを存分に享受するためにも、購入前に制度の要件を確認しておきましょう。

耐震等級を確認する

耐震等級を調べることでも、建物の耐震性を確かめられます。耐震等級1以上であれば、新耐震基準を満たす物件とみなされます。

耐震等級が高いほど、地震に強い物件です。では、地震に強い物件の特徴には、どのようなものがあるのでしょうか。

    建物の質量が小さい

    建物の形が四角形

    高さが低い

まず、建物が重いと地震による揺れ幅が大きくなるため、質量が小さいほど地震に強いとされています。鉄骨造やコンクリート造に比べて軽い木造は、質量の観点でいうと地震に強い構造となります。また、屋根を軽量化することで、地震の揺れで柱や基礎にかかる負荷を下げることができます。

また、正方形や長方形など、四つの面がしっかりと支え合うような建物は、倒壊のリスクが低いです。一方で、コの字型やL字型など、複雑な形の建物の場合は注意が必要です。

さらに、建物の背が低いほど、揺れの影響を受けにくくなります。3階建てよりは平屋のほうが、揺れにくい建物となるでしょう。

しかし、本当の耐震性を調べるうえでは、地盤や建物の構造、使用する工法などのさまざまな要素が関わってきます。より耐震性の高い物件に住みたい方は、「住宅性能評価書」で耐震等級を確認してみてはいかがでしょうか。

新耐震基準に
関するまとめ

1981年の建築基準法の改正により、「旧耐震基準」と「新耐震基準」の区分が生まれました。

「新耐震基準」が生まれてからも、建築基準法は細かな改正を続けています。しかし、やはり耐震の面で大きな差が生まれたのは、この1981年の改正です。ですから、改正から数十年が経過した今も、新耐震基準を満たしているか否かが、住宅ローン控除などのさまざまな制度の要件に入っています。

また、耐震基準は、建築基準法で定められた、最低限の耐震性の基準です。より地震に強い物件を目指すなら、「耐震等級」の考え方も知っておきましょう。耐震等級3の物件は、耐震等級1の物件の1.5倍の強度を持っています。耐震等級2以上で、その他の要件を満たす場合は、「長期優良住宅」としてローンの金利低減や減税などのメリットを受けられることもあります。

過去と現在の「耐震基準」の違いと見分け方を理解し、さらには「耐震等級」の定義を知ることで、より安全で失敗のない住まい選びを実現しましょう。

新耐震基準に関する
よくある質問

クエスチョンマーク一度耐震基準を満たしたら、耐震性が下がることはありませんか?

アンサーマーク築年数が経つほど、耐震性は経年劣化していきます。例えば、壁面のひび割れや柱の老朽化などが原因で、安全面で問題のある建物になっていることも。定期的な修繕やメンテナンスで、安心して暮らせるだけの耐震性を維持していきましょう。

クエスチョンマーク新耐震基準の物件の耐震性は、全て同じですか?

アンサーマーク耐震基準は、あくまで「満たすべき最低ラインの基準」です。新耐震基準を満たす物件は、耐震等級でいうと等級1にあたります。一方で、耐震等級2、耐震等級3といった、さらに耐震性の高い物件も存在するので、耐震性は物件によって異なるといえます。