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マンションを賃貸事務所にすることは可能か|分譲マンションは要注意

作成日:2024.5.9更新日:

個人事業主や中小企業の経営者の方の中には、マンションを事務所として利用することを考えている方もいることでしょう。

賃貸マンションや分譲マンションを事務所として利用する前に、確認しておくべきいくつかの重要な点があります。賃貸マンションの中には事務所利用不可の物件もありますので、事前に事務所利用可能かどうか確認しておきましょう。

この記事では、マンションを事務所利用するために、確認すべきポイントや事務所利用できないケースについて分かりやすく解説します。ぜひご活用ください。

コラムの目次

マンションを事務所利用するメリット

マンションを事務所として利用することで、以下のようなメリットが期待できます。

マンションを事務所利用するメリット

オフィスビルに比べて賃料や保証金(敷金)を抑えやすい

広さやデザイン性の選択肢が多い

自宅でかかる費用の一部を経費として計上できる

通勤にかかる時間を短縮できる

まず、オフィスビルに比べると物件の幅が多く、賃料を抑えやすいのがマンションの特徴です。また、オフィスビルの場合は賃貸物件がほとんどですが、マンションの場合は一戸を自己所有して事務所にすることも珍しくありません。

オフィスビルほどの広さが必要なく、ワンルームや1DKなどの小規模な物件でオフィスを探したい方にも人気があります。無味乾燥なオフィスの内装ではなく、デザイナーズマンションなどで内装にこだわったオフィスにしたい方にもメリットがあるでしょう。スケルトン物件ではないため、「天井を仕上げる」「個室を作る」などの内装費用も抑えられます。

また、個人事業主や社長の方が自宅兼事務所にする場合は、自宅でかかる賃料やリフォーム費、光熱費などの一部を事業用として経費計上することができます。あるいは、分譲マンションの場合は固定資産税や火災保険料、建物減価償却費の一部を経費にすることも可能です。

自宅を事務所にする場合は通勤も発生しないため、すぐに仕事ができる環境を作りたい方にもおすすめです。

メリット

マンション(アパート)を事務所として使いたい人が増えている背景

コロナウイルスの蔓延により、リモートワークが普及した昨今、個人事業主や中小企業の経営者がマンションを賃貸事務所として利用する動きが増えています。

事務所を借りたいけれども、オフィスビルは賃料が高いと感じている方は、自己所有や会社所有のマンションを事務所にしたいと考えるかもしれません。特に、個人事業主や一人社長の方の「自宅兼事務所」としてマンションを使いたいというニーズが高まっています。

その背景には、働き方の多様化による、フリーランスとして働く人の増加があります。また、一人社長の方も別途事務所を設けるよりは、自宅マンションを事務所として利用することで、コスト削減や通勤時間の短縮、急なクライアントからの依頼にも対応できるといった多くのメリットを得られるでしょう。

一方で、マンションやアパートの多くは、住宅専用として貸し出されています。事務所利用ができる賃貸物件も中にはあるのですが、全体の割合として住宅専用の物件よりも少ない傾向にあります。

住宅専用の物件を事務所利用するのは規約違反です。事務所利用不可の物件を勝手に事務所として利用すると、規約違反を指摘されたり、近隣住民とのトラブルに発展したりすることもあります。

まずは賃貸借契約をよく確認し、そもそも事務所利用ができるのかどうかを事前に確認しておくとよいでしょう。また、この記事でご紹介するポイントを理解したうえで、ご自身の会社・事業に合った事務所を選んでください。

マンションを事務所利用する場合のよくあるパターン

マンションを事務所として利用する場合、賃貸物件か所有物件か、住居との兼用か事務所としての専用かなど、いくつかのパターンが考えられます。

<マンションの種類>

  • 賃貸マンション:借りた物件を事務所として利用する
  • 分譲マンション:自己所有・会社所有の物件を事務所として利用する
  • <用途の種類>

  • 自宅兼事務所:マンション・自宅の一部を事務所にする(SOHO)
  • 事務所専用:マンション・自宅の一戸全てを事務所にする
  • <事務所のオーナー>

  • 個人事業主:フリーランスの事務所としてマンションを利用する
  • 一人社長:従業員がいない会社の事務所としてマンションを利用する
  • 中小企業:小規模なオフィスとしてマンションを利用する
  • 上記をそれぞれ掛け合わせることにより、さまざまなパターンが考えられます。

    例えば、個人事業主が居住用の賃貸マンションを「自宅兼事務所」にしたいという場合もあるでしょう。あるいは、企業が会社所有のマンションを事務所にしたいと思うかもしれません。

    賃貸マンションか分譲マンションかによって、事務所利用する際の注意点は変わってきます。また、住居兼用か事業専用かによって、かかる税金が変わる場合があります。

    ビル群

    賃貸マンションにおける「居住専用」と「オフィス利用可」の違い

    事務所として使用する賃貸マンションを選ぶ際には、「居住専用」か「オフィス利用可」かを必ず確認しましょう。

    居住専用マンションの用途は居住用に限られ、事務所使用は原則認められていません。一方で、オフィス利用可のマンションは、事務所としての利用や法人登記を行っても問題は生じません。自宅兼事務所として利用できる物件は「SOHO物件」や「SOHO賃貸」と呼ばれ、事務所利用可の住宅として貸し出されています。

    では、どのような観点から、このように「居住専用」か「オフィス利用可」かが決められているのでしょうか。

    実は、マンションを事務所利用できるかどうかは、居住者とオーナーの間だけの問題ではありません。建物の登記や課税の有無など、法律や税制と関わってくる部分もあります。

    ここでは、「居住専用」のマンションと「オフィス利用可」のマンションの違いを解説します。

    家

    建物の用途による固定資産税・都市計画税の違い

    賃貸マンションか住居用か、事務所や店舗などの事業用かによって、固定資産税や都市計画税の軽減額が変わります。

    土地・建物の固定資産税は、住宅用に使う場合は「軽減制度」があり、固定資産評価額が大幅に減額されます。居住専用のマンションは、この軽減制度を利用している可能性が高いです。

    このようなマンションを事業用として貸し出す場合、固定資産税の税率が増加する可能性があります。

    自宅兼事務所の場合は、居住部分が大きければ居住用とみなされますが、事務所部分が大きくなると固定資産税の軽減に関わってきます。

    同様に、土地にかかる都市計画税も、住宅用の場合は軽減を受けています。ですから、オーナーとしては居住用として貸し出す物件を、勝手に事業用に利用されると、脱税の疑いをかけられる可能性があります。

    そのため、賃貸借契約には「事務所利用可」か「事務所利用不可」かが記載されているはずです。契約内容を確認するか、大家さん・管理会社に問い合わせることで、後々のトラブルを回避することができるでしょう。

    賃貸借契約による消費税課税・非課税の違い

    住居としての賃貸契約の場合、家賃や礼金、保証金(敷金)、更新料などはすべて、消費税の課税対象となりません。

    一方で、事務所として賃貸する場合は、退去時に入居者へ返還されない家賃、礼金、更新料は消費税の課税対象です。

    ですから、事業用としてマンションを契約した場合、借主は賃料や更新料に対してかかる消費税を払わなければなりません。このように消費税の取り扱いも変わってくるため、賃貸物件をどのような用途で利用するかが問題になるのです。

    なお、SOHO物件や自宅兼事務所で、住居物件の扱いとなる場合は、消費税が課税されることはありません。

    原状回復義務の違い

    オフィスとして利用する前提の「事業用賃貸」で物件を借りる場合、住居専用の「居住用賃貸」とは原状回復の義務が変わります。

    居住用の場合は、日常生活で生じた損耗については、退去時の原状回復は貸主が負担します。一方で、事業用の場合は基本的に、通常損耗や経年劣化についても借主に原状回復の義務が生じます。

    これは、オフィスビルだけでなくマンションの場合も同様です。原状回復の特約がどのようになっているか、入居前に賃貸借契約書を確認しましょう。

    なお、SOHOや自宅兼事務所としてのマンション利用であり、主な目的が住居用の場合は、基本的には契約も「居住用賃貸」となります。その場合は物件の賃貸借は居住用とみなされ、通常損耗や経年劣化については、借主が原状回復をする必要はありません。しっかりと契約書を確認し、疑問がある場合は不動産や法律のプロに相談しておくとよいでしょう。

    分譲マンションにおける「居住専用」と「オフィス利用可」の違い

    上記でご紹介した「居住専用」と「オフィス利用可」の物件の違いは、いずれも「賃貸マンション」についてのものでした。

    では、ご自身で購入した「分譲マンション」なら、居住用か事務所用かを問わず、自由に利用できるのでしょうか? ここでは、自己所有・会社所有のマンションを事務所として利用する場合についてご紹介します。

    ここでは、「居住専用」のマンションと「オフィス利用可」のマンションの違いを解説します。

    マンション

    管理規約で事務所利用を違反としていることも

    分譲マンションなら、マンションの一画はご自身のものですから、どんな用途で使ってもよいと感じるかもしれません。

    しかし、マンションによっては管理規約の中で、事務所利用が禁じられていることもあります。

    国土交通省が策定した「マンション標準管理規約(※)」とは、管理規約の標準モデルであり、多くのマンションで類似する規約が採用されています。この管理規約には、以下のような文言が含まれています。

    “区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。”

    このように、管理規約に「専ら住宅として使用する」という指定がある場合、マンションを事務所として利用すると管理規約違反となるので注意が必要です。

    管理規約の法的な強制力

    管理規約はあくまでマンション内のルールであって、購入した物件の用途を制限する法的な強制力がないのではと感じる方もいるかもしれません。

    しかし、実は管理規約の違反が訴訟につながり、事務所としての利用停止を命じられた判例もあります。

    建物区分所有法57条では、「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当する場合、その行為の停止や予防を求めることができると定められています。ですから、分譲マンションでの事務所運営や店舗経営が、周囲の住民の権利・利益を侵害していると判断された場合、裁判などの法的措置を講じられるかもしれません。

    また、建物区分所有法59条では、「区分所有権競売の請求」が可能な場合もあるとされています。分譲マンションとして購入した物件だとしても、あまりにも他社との共同生活が難しいとみなされた場合、物件が競売にかけられ、第三者に譲渡される可能性すらあるのです。

    自分が所有している物件だからと、無断で住居以外の用途に利用することはできません。必ず管理規約を確認し、近隣とのトラブルに発展しないように進めましょう。

    なお、管理組合の運営体制によっては、管理組合側が損害賠償を払うことになった判例もあります。不当な運営によってマンション内の事務所開設を制限し、区分所有者に不利益を与えたとみなされたからです。区分所有者側と管理組合の双方が、お互いの権利を尊重し、マンションの事務所利用を考える必要があるといえます。

    管理規約を変更できる場合

    では、マンションの管理規約を変更することはできないのでしょうか。

    そもそも管理規約とは、分譲マンションの区分所有者同士の関係を定めるルールです。多くの住民が賛同する場合、管理規約を変更することも可能です。

    ただし、この管理規約を変更するには、区分所有法で定められた以下の要件を満たす必要があります。

  • 区分所有者数および議決権の各4分の3以上の多数によって集会で決議する必要がある(区分所有法第31条)
  • 管理規約の変更が、一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす場合は、その一部の区分所有者の承諾を得なければ、管理規約を変更することができない(区分所有法第31条)
  • ですから、まずはマンションの区分所有者全体の4分の3以上の賛成を得る必要があります。あるいは、一部の区分所有者だけが不利益を受ける可能性がある場合は、その承諾も得る必要があります。

    この点を鑑みると、管理規約を簡単に変更することはできないといえるでしょう。当初からマンションを事務所として利用する予定がある場合は、「事務所利用可」を条件に含めて物件を探すことをおすすめします。

    分譲マンションで事務所利用が不可になる理由

    ではなぜ、分譲マンションであるにもかかわらず、事務所としての利用が禁止されるのでしょうか。マンションを事務所として利用すると、管理会社や住民には、以下のような懸念が生まれます。

  • 外部の人の出入りが増加することで、防犯面やセキュリティ上の心配が生じる
  • 来客用の駐車場が専有され、必要なときに利用できなくなる
  • 事務所内の音が上下階や隣の部屋に響く可能性がある
  • 近隣住民とのトラブルを避けるためにも、賃貸マンションの場合と同様に、分譲マンションでも「事務所利用可」の物件を選ぶ必要があります。

    固定資産税の違い

    賃貸マンションの項目ですでにご紹介しましたが、分譲マンションの場合も、住宅用か事業用かでかかる税金が変わってきます。

    分譲マンションを所有すると、建物や土地(敷地利用権が所有権の場合)に固定資産税、土地に都市計画税が課税されます。マンションが居住用の場合は、建物の固定資産税評価額は新築から一定期間、土地の固定資産税評価額は期間を問わず減額されるため、大幅な節税につながります。

    そのため、居住用に用いていたマンションを事業用に変えると、固定資産税や土地計画税が増える可能性があるので注意が必要です。

    なお、事務所と自宅を併用する場合は、全体に対する居住部分の割合により、軽減措置の内容が変わってきます。

    住宅ローンを利用している場合の注意点

    分譲マンションを住宅ローンで購入し、事務所として利用しようとする場合は注意が必要です。

    住宅ローン控除とは、最大13年間、年末の住宅ローン残高の0.7% を所得税や住民税から控除する制度です。大幅な減税が受けられる制度ですが、購入した物件を事業用にすることで、この恩恵の適用外となる可能性があります。

    住宅ローン控除の対象となるのは、物件の床面積の50%以上が居住用部分である場合です。仮に事業用の面積が全体の1/2を超え、減価償却費を必要経費として計上してしまうと、住宅ローン控除が適用できなくなるのでご注意ください。

    事業用部分の割合 住宅ローン控除の適用
    10%以下 全額住宅ローン控除可能
    10%超~50%以下 居住用部分に応じた割合は控除可能
    50%超 全額住宅ローン控除不可

    できれば、事業用部分の割合は10%以下に抑え、全額住宅ローン控除を受けたいところです。

    「事務所利用可」のマンションでチェックすべきポイント

    ここまで、マンションを事務所として利用する場合は、事務所としての利用が許可されているかが重要であることをご説明しました。

    「事務所利用可」「SOHO賃貸」の物件が見つかっても、まだ注意すべきポイントはあります。特に「SOHO物件」、つまり居住を主な目的とする想定の物件の場合は、さまざまな制限が生じる可能性があるのです。

    個人事業主や企業の事務所としてマンションを使うときにチェックしたいポイントをご紹介します。

    ポイント

    登記をすることが可能か

    マンションをオフィスとして使用する場合、登記可能かどうかを事前に確認する必要があります。

    実は、事務所としての使用が許可されていても法人登記を行えないマンションが存在します。例えば、SOHO物件で事務所として利用できても、主な用途は居住用のため、登記が許可されていないようなケースです。

    法人の住所として登記するために事務所を構えるような場合、登記できないとなると別で賃貸事務所やバーチャルオフィスの住所貸しなどを利用しなくてはいけません。事務所を移転する前に、事前に登記可能かを確認しておきましょう。

    事業内容や不特定多数の人の出入りについての制限

    「事務所利用可」の物件でも、業種の制限が設けられていることがあります。例えば、内勤社員の事務所としての使い方は認められるけれども、ネイルサロンのように店舗のような用途は許可されないかもしれません。

    また、居住をメインの用途するSOHO物件の場合も、以下のような用途は禁止されていることが多いです。

  • 学習塾や習い事の教室
  • ネイルサロンなどの店舗
  • その他、不特定多数の人が出入りする業種
  • あるいは、打ち合わせなどで頻繁に来訪者がある場合、規則には抵触していなくても入居者同士のトラブルにつながる可能性があります。あくまで住居用の物件として、ほかの方の生活に迷惑をかけないように利用したいものです。

    看板や表札を掲示できるか

    事務所を構えたら、早速表札や看板を構えたいと思う方もいらっしゃるでしょう。

    しかし、物件によってはドアや表札への社名の掲示、エントランスの郵便受けでの屋号の掲示、共用部である廊下への看板の設置などが制限されることがあります。

    また、ホームページや広告に代替的に住所を記載することも、マンションの入居者とのトラブルや、管理会社へのクレームに発展するかもしれません。どのようなかたちでの事務所利用が可能なのか、事業所を開設する前に確認しておく必要があるでしょう。

    タワーマンションは事務所利用不可が多い

    タワーマンションとは、一般的には20階以上の超高層マンションを指します。多くの高層マンションは住居専用で、事務所利用は不可となっていることが多いです。理由として、タワーマンションを選ぶ方はセキュリティの厳重さを重視していることが多い点が挙げられます。ほかの入居者の秘匿性を守るために、不特定多数が出入りする事務所としての利用を制限されている場合がほとんどです。

    ほかのマンションと同様に、タワーマンションでも管理規約を違反して事務所を開設すると、入居者同士のトラブルに発展します。最悪の場合は訴訟や、賃貸マンションの場合は契約解除、分譲マンションの場合は事務所としての使用停止請求などにつながるかもしれません。マンションの種類を問わず、事務所利用の許可があるかをしっかりと確認することが大切です。

    一方で、一部では「タワーマンション×SOHO」を売りにして、Wi-Fiやコピー機を備えたコワーキングスペースや会議室、カフェレストランなどを併設するマンションも存在します。そのような場合は、郵便受けへの社名の掲示も可能となることが多いです。個人事業主や起業家の方だけでなく、ビジネスパーソンのリモートワークの場としても活用できるでしょう。

    電話で会話

    こんな場合は、「居住専用」でも仕事をすることが可能

    マンションを事務所として利用できないとなると、リモートワークや副業の場合は、どのように扱われるのでしょうか?

    「事務所利用不可」というルールの根本は、「ほかの居住者の共同の利益を害さないこと」にあります。例えば、文筆業やWebデザイナー、プログラマー、会社での仕事を自宅に持ち帰ることなどは、特に規制を受けることはありません。

    一方で、いわゆる「事務所」として利用する場合、不特定多数の方が出入りしたり、看板を設置したりすることにより、ほかの居住者の迷惑になる可能性が生じます。このような懸念がないリモートワークや副業なら、特段の届け出などは必要ないといえるでしょう。

    また、法人登記を行ったり、屋号を掲示したりする場合、「住居用」ではなく「事業用」とみなされる可能性があります。この場合、賃貸借契約や税金に影響を与えるため、オーナー・管理会社に許可を取る必要があるでしょう。

    OKサイン

    事務所利用可能なマンションを探す方法

    ここまでの記事を読んで、「マンションを事務所として利用したい」と感じた方に向けて、事務所利用可能なマンションの上手な探し方をご紹介します。

    リサーチ

    ネットで「SOHO可」「事務所利用可」を選択する

    物件を探す最も一般的な方法は、オンライン不動産サイトでの物件検索ではないでしょうか。

    不動産サイトの多くは、チェックボックス式やフリーワードの形式で、「SOHO可」「事務所利用可」の物件を検索することができます。以下のようなキーワードで不動産を探してみてください。

    SOHO可

    SOHO物件

    SOHO賃貸

    SOHO向け

    SOHO相談可

    事務所利用可

    事務所可

    SOHOとは

    SOHO(ソーホー)とはSmall Office Home Officeの略で、主に個人事業主やフリーランスなど、自宅や小規模オフィスで仕事をする働き方のことです。

    似た言葉に「ノマド」があります。SOHOと同じく、時間や場所に縛られない働き方ですが、どちらかというとカフェやコワーキングスペースで働く人を「ノマドワーカー」ということが多いです。一方でSOHOは、主に小規模オフィス(スモールオフィス)や自宅(ホームオフィス)を仕事場とする人の総称となります。

    業種としては、PCなどの通信機器でできる仕事が多く、ライター・編集者、Webデザイナー、エンジニア、コンサルタント、士業(弁護士・税理士など)といったものがあります。あるいは、起業家の方が仕事場にすることもSOHOの一つのかたちといえるでしょう。

    転じて、住居兼事務所として利用できる物件が「SOHO物件」「SOHO賃貸」などと呼ばれるようになりました。

    不動産会社へ相談する

    あるいは、不動産の仲介業者に物件を紹介してもらうこともできます。

    「SOHO相談可」「事務所利用相談可」といっても、業種や働き方に制限を設けている物件も少なくありません。希望する条件が具体的にある場合は、最初から不動産会社に相談することで、条件に合う物件を探してもらうことができます。

    事務所利用についてのルールや、マンションの管理規約などの細かい点はオンラインには掲載されていません。複数の不動産の専門家に相談し、SOHOや事務所利用が可能なマンションを見繕ってもらうとよいでしょう。

    マンションを事務所利用する際の注意点

    「事務所利用可」「SOHO可」のマンションが見つかったら、賃貸借契約や管理規約の面での心配はなくなります。

    一方で、マンションを利用してうまく事務所を運営するには、いくつかの注意点があります。

  • 近隣住民とのトラブルに注意
  • 住居仕様のためレイアウトがとりにくい
  • プライバシー上のリスク
  • 会社の信用度が低くみられる可能性も
  • 注意点

    近隣住民とのトラブルに注意

    事務所やSOHOでの利用が許可されている物件でも、マンションである以上は住居として使っている方がいることが予想されます。

    コピー機や電話の音が気になる、人の出入りが多い、ごみや備品が廊下に置かれている、駐車や駐輪のルール違反がある……など、隣室や近隣の住民から不満が集まり、管理会社や管理組合から注意勧告をされることもあり得るでしょう。あるいは、共用部の使い方が総会の議題として取り上げられたり、法律トラブルに発展したりする可能性もあるのです。

    法人として事務所を利用しているのであれば、事務所の使い方は会社としての評判にも関わってきます。ご近所の方が暮らす場所であることを尊重し、迷惑をかけないように事務所を運営したいものです。

    住居仕様のためレイアウトがとりにくい

    マンションは、そもそも住居用にレイアウトされていますから、オフィスには必要がない設備も備えられています。

    例えば、お風呂やシャワー、キッチン、クローゼット、和室などは、通常のオフィスにはないことが多いです。こういった設備も、物件の面積の一部となるため、使わないのであれば少しもったいないかもしれません。オフィスとして使える部分は、表示面積から2~4坪は少なくなると考えてよいでしょう。

    また、部屋の間取りも住居用になっています。ワンルームであればあまり気にならないかもしれませんが、2DK以上の物件になると、ほかの部屋へは廊下を通じていく必要があるので、通常のオフィスと比べるとレイアウトが難しいのではないでしょうか。

    中には、マンションでありながらオフィス用にリフォームがされており、浴槽やクローゼットが撤去され、オフィスとして使いやすいレイアウトになっている物件もあります。会社の事務所としての利用であれば、そういった物件を探してみるのもおすすめです。

    一方で、SOHOとしての利用なら、2DK以上のマンション物件は使いやすいでしょう。自宅の一室を書斎・仕事場として使うことができます。寝室とは別室でSOHOスペースを作れると、オン・オフの切り替えもしやすくなります。あるいは、1DKや1LDKのダイニング・リビング部分の一画を、ワークスペースとして使うこともできるでしょう。

    プライバシー上のリスク

    自宅を事務所として利用する場合は、自宅住所のプライバシーが気になります。

    法人登記の住所を自宅にしたり、会社の住所をWeb上で公開したりすると、Web検索や法人番号から住所情報にアクセスできるようになります。

    そうなると、ビジネスでトラブルがあった際に自宅に来訪があったり、知人や近隣住民が事業の内容を知ったりする可能性が生じます。周囲に内密で会社を起こしている、あるいはネット通販などで会社住所を公開する必要があるような場合は、自宅住所=会社の住所にしないほうが無難です。

    また、多数の人が出入りする場合は、事務所スペースと自宅スペースをしっかりと分け、貴重品やプライベートな部分が人目に触れないように注意が必要です。

    プライバシー対策としては、自宅以外の場所に事務所用の物件を借りたり、法人登記用の住所貸しをしてくれるバーチャルオフィスを利用したりすることができるでしょう。

    会社の信用度が低くみられる可能性も

    事業内容によっては、会社の住所によって信用度を判断されることがあります。

    求人募集を行ったり、新しい取引先や顧客を開拓したりする際に、その入居ビルから会社の内情を推測されることもあるのです。例えば、面接に訪れた会社が駅に近い主要オフィスビルなのか、あるいは居住用のマンションの一室なのかによって、良くも悪くも会社への印象が変わってきます。

    一般的に、個人事業主のSOHO利用や、従業員が数人程度の会社、ネイルサロンやエステなどの小規模の店舗であれば、そこまで入居物件が事業に影響を与えることはないでしょう。ただし、会社の規模が大きくなり、取引の機会が増えてくるほど、どのような物件でオフィスを構えるかの重要度はアップします。コストだけでなく、来訪・通勤のしやすさや採用ブランディングの面など、総合的に判断して入居物件を選びましょう。

    あるいは、直接の来客が少ない事務所であれば、バーチャルオフィスやシェアオフィスで住所を借り、重要な会議などは貸し会議室で行うこともできます。

    こんな方にはレンタルオフィスがおすすめ

    上記でご紹介したように、マンションを事務所として利用するには、いくつかの注意すべき点があります。

    近隣住民とのトラブルや、オフィスとしてのレイアウトのしにくさ、自宅住所のプライバシーや会社の信用度が気になる。しかし、オフィスビルに入居するには賃料がネックとなる……という方もいるのではないでしょうか。

    そんなときに候補となるのが、「レンタルオフィス」や「シェアオフィス」の利用です。

    レンタルオフィスやシェアオフィスは、オフィス専用で設計されているため、レイアウトしにくいという心配はありません。小規模の会社の場合も、人数に応じてデスクや専有スペースを借りることができます。

    また、都市の中心部に位置するレンタルオフィスやシェアオフィスを利用すれば、会社住所としての信頼度も十分です。アクセスのよい場所に入居すれば、お客様先への移動しやすさや採用ブランディングにもつながるでしょう。

    レンタルオフィス・シェアオフィス

    マンションでもなく、オフィスビルでもない、第三の事務所や仕事場の選択肢となるのが、レンタルオフィス・シェアオフィスです。通常の賃貸借契約ではなく、サービスや施設の利用契約で入居できるオフィスで、「フレキシブルオフィス」と呼ばれることもあります。

    少人数でも人数に応じた予算でオフィスを利用できる点や、Wi-Fi、コピー機といったオフィスに必要な備品が揃っています。また、ほかの入居企業とのコワーキングによる、人脈・つながりの創出も期待できます。また、系列のオフィスが各都市にあり、日本全国でフレキシブルにスペースを利用できるサービスもあります。

    レンタルオフィス・シェアオフィスという言葉は、似た意味で使われますが、一般的には以下のように使い分けられています。

    <レンタルオフィス>

  • 個室の専有スペースをオフィスとして借りられる。
  • 別途、共有ラウンジや貸し会議室を利用できることが多い。
  • 内装はオフィス向けで整えられているので、内装工事なしでも入居できる。
  • <シェアオフィス>

  • ほかの企業とともに、共有ラウンジやワークスペースを利用できる。コワーキングスペースとも呼ばれる。
  • 別途、個室や貸し会議室を利用できることが多い。
  • シェアオフィスによっては、入居者イベントなどを頻繁に開催し、他社とのつながりを作る効果も期待できる。
  • また、多くのレンタルオフィス・シェアオフィスでは、法人登記のための名前貸しを行っています。郵便受け取りや代表電話の応対などを代行してくれる場合もあるため、業態にうまくマッチすれば有効な事務所の選択肢となるでしょう。

    バーチャルオフィス

    バーチャルオフィスとは、個室や作業用のスペースなどは用意されておらず、オフィスの住所のみを貸すサービスです。

    SOHOやリモートワークなどで、自宅で仕事をしながら法人登記をしたいケースに適しています。また、マンションに作業拠点としての事務所を設置し、プライバシー保護のためにバーチャルオフィスの住所を借りることもできるでしょう。

    法人登記、名刺やWebサイトへの住所の記載、オンライン通販の際に表示する会社住所、許認可や事業の届出などで住所が必要な際に役立ちます。また、郵便物の転送サービスを利用できる場合もあります。

    ただし、士業や不動産業など、事業所を確保するように法律で定められており、バーチャルオフィスのみでは開業できない業種もあるのでご注意ください。

    マンションの事務所利用に関するまとめ

    この記事では、経営者や個人事業主の方に向け、マンションを事務所として利用する際のポイントをご紹介しました。

    一般的には、マンションの「事務所利用」は不可であることが多いです。賃貸マンションか分譲マンションかを問わず、管理会社や管理組合に「事務所利用可」と認められている物件を選ぶ必要があります。

    無断でマンションを事務所利用すると、賃貸マンションの場合は契約解除や物件の明け渡し、分譲マンションの場合は事務所としての利用停止を求められる可能性が高いです。入居者同士や管理会社との問題が起きるだけでなく、固定資産税や都市計画税、消費税といった税金面の懸念も生じます。トラブルを回避するために、必ず規約や契約の内容を確認してから事務所としての利用を始めましょう。

    また、自宅のプライバシーや、近隣住民とのトラブルが気になる場合は、レンタルオフィスやシェアオフィス、バーチャルオフィスの利用も選択肢となります。レンタルオフィス・シェアオフィスはオフィスビルに比べると、小規模の会社の場合は賃料を抑えやすく、Wi-Fiなどのオフィス環境が整っているのもメリットとなります。

    マンション、オフィスビル、サービスオフィスなど、さまざまな選択肢の条件を把握し、自社に最適な事務所物件を選びましょう。本記事を参考に、事務所の開設が円滑に進みますことを願っています。

    マンションの事務所利用に関する
    よくある質問

    クエスチョンマーク同じマンションのほかの住民が、居室を事務所として利用しています。その場合は、マンションを事務所として利用してもよいですか?

    アンサーマーク同じマンションだからといって、契約や規約内容が同じとは限りません。例えば、「1階のみ事務所として利用可能(2階以上は居住専用)」あるいは「○年△月以降は新規の事務所利用を認めない」といった契約、規約になっていることもあり得ます。必ず、ご自身の利用規約や賃貸借契約を確認し、管理組合やオーナーにも確認を取るようにしましょう。

    クエスチョンマーク事務所利用可の物件では、屋号をウィンドウサインや看板で掲示してもよいですか?

    アンサーマーク事務所利用可でも、細かい規則で法人登記や共用部の利用についての規制がある場合があります。例えば、法人登記をするのは構わないが、共用部への看板の掲示は避けてほしいといった管理規約や賃貸借契約は十分にあり得ます。