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個別空調とセントラル空調の違いとは?
メリットとデメリットを解説

作成日:2024.5.9更新日:

オフィスや店舗に空調を導入するとき、考えるべきは空調のタイプです。

オフィスなどのビルの空調は、「個別空調」と「セントラル空調」に大きく分けられます。それぞれの機能の違いに始まり、メリット・デメリット、業種ごとに向いている空調のタイプまで、オフィスの空調で知っておくべきポイントを紹介します。こちらの記事を参考に、ご自身のオフィスに最適な空調設備を選んでください。

空調設備の種類、仕組みを解説

オフィスや店舗の快適さの非常に重要なファクターとなる、空調設備。空調設備は「個別空調」と「セントラル空調」の二つに大別され、それぞれに異なる機能と特性を持っています。

どちらの空調がご自身の事業や業態に適しているのかを考えるうえで、ここでは「個別空調」と「セントラル空調」の特徴とメリット・デメリットを見ていきましょう。

空調設備業者

個別空調とは?

「個別空調」の特徴と、それがなぜ選ばれるのかについて説明します。

個別空調とは、その名のとおり部屋ごとに設置され、それぞれが独立して温度管理が可能な空調設備のことです。「個別空調方式」「個別管理方式」「個別熱源方式」といった呼び方もありますが、いずれも同じ意味を指しています。

空調のオン・オフだけでなく、冷房・暖房・換気などのモード切り替えや、温度の変更も自由にできます。一般家庭に設置されているエアコンをイメージいただくと分かりやすいかもしれません。

一般的に、雑居ビルにさまざまな業態の店舗が入居しているケースや、中規模以下のオフィスビルでは、個別空調が選ばれることが多くなっています。

個別空調にも、パッケージエアコンやマルチエアコンといった種類があります。部屋の数や構造によって、どのようなタイプの個別空調が適しているかは変わってきます。パッケージエアコンは小~中規模のビル、マルチエアコンは床面積が3000㎡以上で部屋数の多い中~大規模ビルで多く選ばれています。

個別空調のメリットとは?

個別空調の最大のメリットは、部屋ごとに独立して温度設定できる点です。部屋の利用状況や時間帯、利用者の好みに応じて、最適な温度に室温を調整できます。

また、必要な空間だけに空調を効かせることができるため、エネルギー消費が抑えられ、電力を無駄遣いすることがありません。このような利点から、100坪以下の小規模~中規模のオフィスや、独立した店舗でサービス業や飲食業を営む場合には、個別空調が採用されることが多くなっています。

個別空調のメリット
  • 部屋ごとに独立して温度設定できる
  • 利用者の好みに応じて、最適な温度に室温を調整できる
  • 個別空調のデメリットとは?

    部屋ごとに温度を調節できることで人気の高い個別空調。しかし、セントラル空調と比較したときのデメリットもあります。

    まず、使用量に応じて電気料金が変わるため、ランニングコストの管理が必要になります。夏季や冬季などの空調が活躍する時期は、思った以上に費用が高額になることも。使用の頻度やオフィスの広さによっては、セントラル空調を選ぶほうが割安になるケースがあるので注意が必要です。

    個別空調が用意されていないビルであれば、設備費や工事費がかかるので、その点も考慮して空調の方式を選びましょう。

    また、部屋ごとに室温を管理する必要があるので、複数の部屋があるようなオフィスや、大規模のオフィスには不向きです。季節ごとに設定温度を変えたり、オン・オフの時間を決めたりと、管理の手間が発生します。メンテナンスや修理についても、空調ごとに個別に対応する必要が生じます。

    個別空調のデメリット
  • 使用量に応じて料金がかかる
  • 部屋ごとの管理が必要
  • セントラル空調とは?

    セントラル空調は、「全館空調」や「集中空調」、「中央管理空調」とも呼ばれます。熱源が地下や屋上などの一か所にまとめられ、中央管理室などで一元的に空調が制御されています。熱源機器から、冷温水を空気調和機に送水することで、全館の温度や湿度を調整します。

    大きなビルに入居しているオフィスなどで、「全体の空調が統一されているため、各部屋の温度調整ができない」と聞いたことはありますか? これがまさに、セントラル空調の仕組みです。建物全体の空調が、1つの空調設備で管理されているのです。

    なお、セントラル空調だからといって、必ずしも、部屋ごとの調整ができないわけではありません。一部のセントラル空調にはVAV(Variable Air Volume)といって、部屋ごとの風量を調整することで、全体のエネルギーを削減する仕組みが取り入れられています。

    セントラル空調のメリットとは?

    セントラル空調の最大のメリットとは、大規模な建物全体の温度を一定に保てることです。

    例えば、病院、デパート、オフィスビル、図書館や美術館など、人の出入りが多い建物では、温度に偏りが出ないように留意しながら、快適な室温を保つ必要があります。トイレや廊下といった共用部でも、一定の暖かさや涼しさが求められるでしょう。このような建物においては、セントラル空調で敷地全体の温度を一元管理できる点が大きなメリットとなります。

    また、静音性が高いのもセントラル空調の特徴です。地下や屋上、建物の外部など、熱源が隔離された場所にあるため、騒音が起きにくく静かな送風が実現されています。そのため、映画館などの静けさが求められるような空間でも、セントラル空調は採用されています。

    さらに、セントラル空調は熱源を一か所にまとめる仕組みの空調ですから、個別空調のように各室に空調機器を置く必要がありません。室外機を複数置くこともないので、建物の内観・外観ともに、省スペースで見た目もすっきりとした印象となるでしょう。

    オフィスに入居する側としては、空調にかかるコストも気になるところです。セントラル空調のビルでは、空調のコアタイム(例:平日8時~20時)が決められています。その時間内であれば、 共益費に空調の使用料が含まれており、追加の費用を考えることなく、快適な室温のオフィスを利用できます。

    セントラル空調のメリット
  • 建物全体の温度を一定に保てる
  • 静かで動作音がほとんど気にならない
  • 個別空調のように各室に空調機器を置く必要がない
  • セントラル空調のデメリットとは?

    セントラル空調の場合は、各部屋で自由に空調をオン・オフしたり、冷房と暖房を切り替えたりすることができません。そのため、個々人の「暑い、寒い」といった要望や、「サーバー室だけ冷房にしたい」といった、部屋ごとの温度調整には対応しにくいというデメリットがあります。

    しかし、一般的にセントラル空調では、外気温に応じた温度や湿度の調整がなされています。従業員が各自服装を調整すれば、この点は大きな問題にならないかもしれません。

    そして、深夜の残業や土日出社など、ビルの営業時間外に空調を稼働させる場合は、追加で費用が発生する可能性が高いです。

    一般的に、ビルごとに営業時間が決まっており、時間外に空調を使う場合は、別途費用が請求されます。フレックスタイム制を導入しており、定時で従業員が出社するとは限らない企業の場合は、共益費以上の空調費用が負担になるのではないでしょうか。

    セントラル空調のデメリット
  • 部屋ごとに室温を調整できない
  • 残業や土日出社の場合は追加で費用が発生する
  • 業種で分ける空調のタイプ

    では、「個別空調」や「セントラル空調」はそれぞれ、どういったオフィスや施設に適しているのでしょうか?

    ここでは、業種やビジネスの特徴に焦点を当てて、適切な空調方式の選び方を紹介します。

    ミーティング

    個別空調に向いている業種とは?

    特に個別空調に向いているのは、独立した店舗で飲食業・サービス業を営む、レストランやカフェ、美容室やエステサロンなどに空調を導入する場合です。小規模の独立した店舗では、ほとんどの場合、個別空調が選ばれています。

    接客業の場合は、お客様の体感温度や、来客の有無によっても、空調の必要性が変わってきます。必要に応じて温度を調整できるよう、個別空調になっている店舗が多いでしょう。

    また、雑居ビルにさまざまな店舗が入居している場合も、個別空調が適しています。例えば、A店は日中に小売店、B店は24時間利用できるマッサージ店、C店は夜間~早朝にバーを営業しているようなビルであれば、同じ時間に全館の空調を稼働するセントラル空調は効率が悪くなるでしょう。

    オフィスビルの場合でも、100坪以下の小規模~中規模のビルであれば、個別空調が適しています。一般に、延床面積が1万㎡以下のビルでは、多くの場合において個別空調が採用されます。

    セントラル空調に向いている業種とは?

    では、セントラル空調はどのような業種に向いているのでしょうか?

    ある程度の広さがあり、人の出入りが多いような建物では、セントラル空調が採用されていることが多いです。エントランスや廊下、トイレなども含め、全館で温度を一定に保てるというメリットがあります。特に、延床面積が1~2万㎡以上の建物には、セントラル空調がとても適しています。

    具体的には、大規模な工場、病院、地下街や地下鉄の構内など、広い空間を一定の温度に保つ必要があるような施設です。また、デパートや商業施設など、自由に出入りできるような店舗が複数入っているような建物では、基本的にセントラル空調が採用されています。

    そして、300坪以上の大規模なオフィスビルでも、多くの場合、セントラル空調が採用されています。

    セントラル空調が向いているのは、決まった曜日、決まった時間に、建物全体が稼働するような場合です。例えば、平日の9時~17時が業務のコアタイムで、深夜と土日以外は稼働しているような企業が入居するオフィスビルの空調は、セントラル方式になっていることが多いでしょう。

    一方で、オフィスビルでもフレックスタイム制やリモートワークの導入などで、空調を利用する時間にばらつきがある場合は、個別空調システムのほうが適していることも。ご自身のオフィスに適した空調システムを選びたいものです。

    個別空調とセントラル空調の費用の違い

    個別空調かセントラル空調かを選ぶうえで、押さえておきたいのは両者の「コスト」の違いです。

    ここでは、初期費用、ランニングコスト、メンテナンス費用といった、個別空調とセントラル空調にかかる費用を比較してみましょう。

    2つものを比較

    初期費用

    個別空調とセントラル空調を比べたときに、初期費用が大きくなりやすいのはセントラル空調です。

    この初期費用は、ビルのオーナーが負担するため、入居するテナント側は、初期費用を考慮する必要はないでしょう。

    一方で、個別空調の場合は、入居するテナントが空調設備を用意しなくてはいけない場合があります。セントラル空調に比べると、初期投資の金額は低いとはいえ、テナント側の負担は大きくなるかもしれません。

    ランニングコスト

    オフィスの電気代といえば、OA機器や照明にかかる費用のほかに、代表的なのが空調にかかる電気代です。一般的には、電気消費量の約5割を空調機器が占めているといわれるほど、空調がオフィスの維持費に与える影響は少なくありません。

    初期費用がかかるタイミングは、最初の一度だけ。一方で、ランニングコストは毎月、毎年かかってくるコストで、オフィスを退去するまではずっと続きます。ですから、会社の収支を考えるうえでは、ランニングコストを管理することが非常に重要です。

    では、個別空調とセントラル空調のランニングコストは、それぞれどのようになっているのでしょうか?

    個別空調とセントラル空調のどちらでランニングコストが高くなるかは、使い方によって変わります。例えば、一日のうちの稼働時間が短いのであれば、オン・オフを自由にできる個別空調のほうが電気代を抑えられます。

    一方で、個別空調は使用量によって電気代が変わるため、使いすぎるとセントラル空調よりもコストがかかることもあるでしょう。

    セントラル空調の使用料は、建物の共益費に含まれているため、毎月のコストを管理しやすいのが特長です。ただし、決められた利用時間を超える場合には、時間外の料金が別途発生します。

    個別空調のランニングコストを下げる方法

    使用量によってランニングコストが変わる個別空調ですが、その分、費用を節減する余地が残されているという考え方もできます。ここでは、個別空調のランニングコストを抑えるためのポイントをご紹介します。

    まずは、個別空調の設定温度についてです。エアコンの設定温度が1℃変わるだけで、10%以上消費電力が上下するともいわれています。必要以上にエアコンのパワーを上げることなく、室温を快適に保つ工夫をしてみましょう。

    例えば、夏場はカーテンやブラインドなどで日光を遮蔽することで、室内の温度が上がりにくくなります。反対に、冬場は日光を取り入れたり、窓に遮熱シートを貼ったりすることで、寒気の影響を受けにくくなるでしょう。

    さらに、エアコンは製品によって電気代が変わってきます。新しいモデルほど省エネ仕様になっているだけでなく、使い続けた古いエアコンは、経年劣化によって消費電力量が大きくなります。10年以上前から使っているエアコンであれば、買い替えを検討するのも一つの方法です。

    メンテナンス費用

    空調が壊れてしまったときの修繕費やメンテナンス費用は、設備が大規模な分、セントラル空調のほうが高くなりやすいです。

    しかし、空調の所有者がビルのオーナーの場合は、初期費用と同様、テナントへの直接の影響はないでしょう。ただし、空調が完備されていない物件で、テナント側が個別空調を導入した場合は、そのメンテナンスや修繕にかかる費用もテナントが負担します。

    個別空調とセントラル空調に
    関するまとめ

    「個別空調」と「セントラル空調」のどちらが適しているかは、建物全体の広さや、入居するテナントの営業時間によって変わります。

    そのため、初期費用やランニングコスト、温度調整のしやすさに差があるとはいえ、「どちらが優れている」と一概に決められるものではありません。建物全体の特徴や、入居するテナントの業態を考慮したうえで、最適な空調方式を選ぶことをおすすめします。

    また、入居する物件を探しているテナントの方は、物件の空調方式まで確認するとよいでしょう。自社の業態に合った空調方式を選ぶことで、空調の使用料を抑えて快適なオフィスや店舗を用意できるでしょう。

    個別空調とセントラル空調に関する
    よくある質問

    クエスチョンマーク個別空調とセントラル空調の寿命の違いは?

    アンサーマーク業務用の個別空調の寿命の目安は、約10年。一方で、セントラル空調の場合は約30年と、長く使えるのもセントラル空調のメリットです。その分、初期投資の費用や故障したときの修繕費は、セントラル空調のほうが高くなる傾向にあります。

    クエスチョンマーク個別空調とセントラル空調の併用は可能ですか?

    アンサーマークセントラル空調を採用しているビルで、必要に応じて個別空調を導入し、2種類を併用することもあります。例えば、全体の温度管理はセントラル空調を利用し、時間外は個別空調を稼働させるといった使い方ができます。