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オフィスの原状回復とは?|
基本的なルールと費用相場を徹底解説

作成日:2024.5.7更新日:

オフィスの原状回復とは、賃貸オフィスの退去時に、借りていたスペースを入居時の状態に戻すことを指します。

この記事では、原状回復が必要な範囲や、費用の相場、信頼できる業者の選び方など、原状回復について知っておくべき基礎知識をご紹介します。

オフィスの原状回復とは?抑えておく基本ルール

オフィスの入居期間が長くなればなるほど、壁紙や床に汚れや傷が生じたり、内装工事で壁や間仕切りを増設したりと、入居したときとは変わっている点があることでしょう。

これらの変化を、できるだけ入居時の状態に戻すことを指して「原状回復」と呼びます。清掃やクリーニングだけで済む場合もあれば、壁紙の張替えや修繕工事、撤去工事が必要になる場合もあるでしょう。

ここでは、退去までの原状回復の流れや、知っておくべき基本的なルールについてご紹介します。

建設工事中

原状回復での退去までの流れ

オフィス退去時の原状回復は、以下のような流れで進めていきます。

  • 1.オフィスの解約通知
  • 2.原状回復義務の範囲を確認
  • 3.工事業者を選定
  • 4.現地調査
  • 5.見積もりの提示
  • 6.工事スケジュールの決定
  • 7.原状回復工事の実施

オフィスの退去が決まったら、退去の半年前を目安に、オフィスのオーナーや管理会社に解約通知を行います。なお、解約通知のタイミングは、入居時に締結した賃貸借契約によって変わってきます。

解約通知の際に、必要な原状回復の範囲を確認しましょう。どこまでの原状回復が借主の義務になるのか、契約書を参照してください。念のために、オフィスのオーナーや管理会社にも相談しておくと安心です。

続いて、原状回復を依頼する工事業者を選定します。管理会社側から、工事業者の指定がある場合は、そちらの業者に依頼することになります。

業者が現地調査のうえで、詳細な費用の見積もりを提示します。大体の工事期間が決まったら、具体的な日程をスケジュールに落とし込み、実際に原状回復の工事が始まります。入居しているビルによっては、工事が可能な曜日や時間帯が決まっていることもあるので、各方面に確認のうえで進めてください。

原状回復での必要な期間

原状回復にかかる期間の目安としては、100坪未満のオフィスの場合は2週間から1か月程度かかります。100坪以上のオフィスでは、1ヶ月以上かかることもあります。

入居時に内装工事を行った場合は、原状回復工事のほうが入居時よりも多くの時間を要することが少なくありません。原状回復の内容によって、必要な期間は変わってくるので、具体的なスケジュールについては工事業者にご相談ください。

なお、原状回復の工事は、必ず賃貸借契約の期間中に完了させる必要があります。つまり、退去日には原状回復が完了した状態で、オフィスを明け渡すことになります。退去日を過ぎると追加で費用を請求される場合もあるので、余裕を持って原状回復に着手するとよいでしょう。

原状回復での必要な範囲

では、借主はどこまで原状回復の義務を負うことになるのでしょうか?

原状回復が必要な範囲は、入居時に結んだ契約によって異なります。一般的には、以下のような原状回復が求められることがあります。

  • ・壁や床、天井などの汚れのクリーニング
  • ・窓やサッシ、照明のクリーニング
  • ・くぎ穴、ねじ穴の修復
  • ・増設した壁や間仕切りの撤去
  • ・什器や備品の撤去
  • ・電気、電話線、LAN線の撤去
  • ・看板などの外装の撤去

原状回復での不必要な範囲

個人の賃貸借契約とは異なり、オフィスの退去時には、基本的にはすべての原状回復を借主が負担します。ここでは、例外的に借主による原状回復が不要になるケースについて解説します。

建物の経年劣化

経年劣化とは、月日の経過による建物の劣化のこと。年数が経ったことによる壁紙の日焼けや、フローリングの色褪せ、釘やねじの錆で起きる扉の不具合などが当てはまります。

経年劣化の場合は、借主が原状回復しなくてよいと思われがちです。しかし、オフィスとして建物を借りている場合は、経年劣化の原状回復も、借主の義務となる場合があります。

契約に特に記載がない場合は、経年劣化による壁紙の変色や床の変色の原状回復は、貸主の責任となります。しかし、契約の中に「原状回復特約」が含まれており、そちらに記載がある場合は、経年劣化した範囲も含めて、テナント側で原状回復を行います。

オフィスとして賃貸借契約を結ぶときは、多くの場合、「原状回復特約」に経年劣化した範囲を含む原状回復の義務が示されています。入居時にもともとあった汚れや傷については、しっかりと確認して写真などの証拠を残しておくことで、退去時のトラブルを避け、原状回復のコストを抑えることができます。

建物の通常損耗

建物の通常損耗とは、普通にオフィスを利用する中で、自然と起こりうる傷や汚れのこと。家具の設置による床のへこみや、テレビや冷蔵庫の裏にできる壁の黒ずみ(電気焼け)などが当てはまります。

通常損耗も、経年劣化と同様に、特別な定めがない場合は貸主が原状回復をします。

しかし、オフィスとして賃貸借契約を結ぶ場合は、多くの場合、契約に「原状回復特約」が含まれています。こちらに原状回復の義務が示されていると、経年劣化や通常損耗であっても、借主が責任を持って原状回復する必要があります。

賃借人に帰責性がない事象

先述した「原状回復特約」に記載がなく、なおかつ、借主の故意や過失によるものではない損傷については、賃借人の帰責性のない損傷となります。「帰責性がない」とは、法的に責任を負う必要がないという意味です。例えば、台風や災害でオフィスが損傷しても、この損傷は借主の責任にはならないのです。

また、「原状回復特約」には、必要な原状回復の範囲が具体的に記載されています。例えば、「貸室の汚損の有無及び程度を問わず、専門業者による清掃を実施し、その費用として2万5000円(消費税別)を負担する」のように、どのような原状回復が必要になるかが記載されます。このような特約の記載がなく、賃借人の帰責性がない範囲については、借主が原状回復を行う必要は生じません。

つまり、以下に該当する損傷については、借主が原状回復の責任を負う必要はありません。

  • ・「原状回復特約」に記載がない場合
  • ・借主の故意や過失による損傷(特別損耗)ではない場合
  • オフィスの原状回復 その他のルール

    ここまで、「原状回復特約」に記載がある場合は、経年劣化や通常損耗であっても、借主が原状回復する必要があることを解説しました。また、特約に記載がない場合は、故意や過失による損傷以外の範囲を原状回復する必要はありません。

    一方で、原状回復特約に記載があるからといって、すべての特約が法的に認められるとは限りません。暴利的な特約であると考えられる場合や、借主が特約による義務を認識していない場合は、特約が無効になることもあります。退去時の貸主とのトラブルを回避するためにも、契約時にしっかりと特約の内容を確認しておくことが重要です。

    また、敷金(保証金)の中から、原状回復の費用を支払われる場合もあります。入居時に支払った敷金から、原状回復費用と償却分を差し引いた金額が退去後に戻ってきます。退去の3〜6ヶ月後を目安に、契約に準じたタイミングで敷金の返還が行われます。

    しかし、原状回復工事の内容によっては、費用が敷金の金額を上回ることがあります。その場合は、かかった費用の清算が別途必要になります。

    オフィスビルの原状回復工事の費用相場

    では、オフィスビルの原状回復工事には、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか。

    ここでは、原状回復工事の費用相場をご紹介します。

    コスト

    賃貸オフィスの原状回復工事の相場とは?

    賃貸オフィスの原状回復工事の相場は、オフィスの規模やグレードによって変わってきます。一般的な工事費用の相場をご紹介します。

      <工事費用の相場(坪単価)>

    • ・小規模のオフィス : 3~5万円
    • ・中規模のオフィス : 5~8万円
    • ・大規模のオフィス : 8~15万円

    例えば、30坪の小規模オフィスで、一坪当たりの工事費用が3~5万円の場合、費用の総額は90~150万円。一方で、100坪の大規模オフィスで、一坪当たりの工事費用が8~15万円の場合、費用の総額は800~1,500万円となります。

    費用感については、各ビルの内装のグレードや、原状回復工事の内容によって、大きく変わってきます。詳細については、業者が現地調査を行ったうえで提示される見積もりを参照してください。

    賃貸オフィスの原状回復工事の費用とは?

    • ・増設した間仕切りや設備の撤去
    • ・壁や床に空いた穴の修繕
    • ・壁紙の張り替え、クリーニング
    • ・窓、床、天井のクリーニング
    • ・家電や水回りのクリーニング
    • ・電気・通信配線の撤去
    • ・外装の撤去 など

    それぞれに費用がかかり、「クリーニングはA社、内装工事はB社」のように、複数の業者に依頼する場合もあります。

    ここでは、原状回復でかかる費用のひとつとして、オフィス退去時のクリーニング費用の相場をご紹介します。

      <クリーニング費用の相場(100㎡以内)>

    • ・床のクリーニング : 20,000円~
    • ・カーペットのクリーニング : 25,000円~
    • ・エアコンのクリーニング : 25,000円~
    • ・窓のクリーニング : 10,000円~

    なお、クリーニング費用もオフィスの広さや仕様、依頼する業者によって大きく変わってきます。具体的な金額を知るには、必要な原状回復工事の範囲を確認のうえで、業者に見積もりを依頼してください。

    原状回復工事の失敗しない業者の選び方

    原状回復工事の費用や工事期間は、オフィスの広さや状態だけでなく、工事を依頼する業者によっても変わってきます。工事にかかる費用を抑えるとともに、信頼できる業者を選びたいところです。

    まず、入居時の契約で原状回復の業者が指定されている場合は、指定の業者を利用する必要があります。別の業者に依頼してしまうと、貸主とのトラブルに発展する可能性も。原状回復が必要な範囲だけでなく、指定業者の有無についても、事前にしっかりと確認してください。

    工事業者を自分で選定できる場合は、豊富な実績と経験を持つ、信頼できる業者を選びたいものです。ここでは、原状復帰工事の業者を選ぶ際に失敗しないための選び方をご紹介します。

    原状復帰工事で、特に重要なのは「工事のスピード感」です。オフィスを解約するときは、退去日までに原状復帰工事を完了させ、オフィスを明け渡す必要があります。つまり、工事の期間中も、オフィスの賃料がかかっているのです。また、退去日に工事が終わっていないとなると、追加の賃料や違約金を支払う必要が発生します。スピーディな対応とスケジューリングにより、最短の工事期間で丁寧な工事を進めてくれる業者を選びたいところです。

    また、提示された費用が適正かどうかも、契約前にチェックしておきたいポイントです。安さだけで業者を選ぶべきではありませんが、あまりにも適正価格からかけ離れた金額を提示された場合には、交渉の余地があるかもしれません。インターネット上の料金相場や、複数社の相見積もりを比較検討し、金額に納得したうえで原状回復の工事業者を決めましょう。

    また、入居中に間仕切りや家具の増設工事を行った場合は、同じ業者に撤去工事を依頼するとスムーズに話が進みます。

    オフィスの原状回復に関するまとめ

    日々、オフィスで働くうえでは、さまざまな傷や汚れが生まれるものです。経年劣化や通常損耗だけでなく、特別損耗と呼ばれる、故意や過失による大きな傷がついてしまう場合が少なくありません。特に、来客のある店舗の場合は、床や設備に思わぬ損耗が生じることもあるでしょう。

    そういった傷や汚れは、オフィスを退去する前に、契約内容に沿って原状回復する必要があります。通常のアパートやマンションの賃貸では、原状回復の義務が生じない部分でも、オフィス賃貸の場合は原状回復が必要になることも。入居時は、契約書に記載されている「原状回復特約」の内容もしっかり確認しておきましょう。

    注意したいのは、退去日までに原状回復を完了させ、契約内容を満たしたピカピカの状態で、貸主にオフィスを明け渡す必要があること。退去日を過ぎてしまうと、追加で賃料や違約金がかかる場合もあるので、早めに工事業者のスケジュールを押さえ、契約期間中に修繕やクリーニング、家具や備品の撤去を完了させましょう。

    オフィスの原状回復に関する
    よくある質問

    クエスチョンマーク原状回復の費用が高くなるのはどのようなケースですか?

    アンサーマーク一般的に、オフィスの規模が大きいほど、原状回復にかかる費用は高くなります。また、ビルのグレードによっても、設備や壁紙、床やカーペット等の修繕費が変わってきます。さらに、スケルトン貸しの物件に内装や設備を施した場合も、退去時は最初のスケルトンの状態に戻す必要があるので、撤去費用や工事費用が高額になりやすいです。

    クエスチョンマーク原状回復の費用を抑える方法はありますか?

    アンサーマーク日々のオフィス利用の中で、必要以上に汚れや傷をつけないことが、退去時の費用削減につながります。例えば、家具を設置する際にクッション材を設置したり、直接フローリングに置くのではなくカーペットを敷いたりすることで、家具の重みによる床の傷やへこみが軽減されます。大型の家具の搬入や、内装工事の際はビルのオーナーにも都度相談することで、退去時の思わぬトラブルも避けられるでしょう。

    クエスチョンマーク原状回復工事の費用が高すぎるときは?

    アンサーマーク入居時の契約内容によって、必要な原状回復工事の範囲が決まります。原状回復の見積もりが高すぎると感じたら、原状回復工事を必要としない共有部分などの工事費用が、見積もりに含まれていないかチェックしてみてください。契約に含まれていない範囲の工事費用を借主が支払う必要はありません。