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【徹底解説】賃貸事務所・オフィスは火災保険の加入必須?

作成日:2024.5.7更新日:

賃貸で事務所やオフィスを借りている方にとって、「火災保険」は縁が遠いように感じるかもしれません。オフィス内で火を使う機会もないので、加入の必要がないとお考えの方もいるのではないでしょうか。

しかし、オフィスで生じる火災は大半が「電気火災」で、電気機器や配線機器からの発火によるものです。照明や電子機器など、身近なところから火災に発展するケースが多いので注意が必要です。

この記事では、万一に備えたリスクマネジメントとして、事務所・オフィスで火災保険に加入する重要性をご紹介します。オフィス火災の原因から、保険ごとに異なる補償の内容までを詳しく解説しますので、安心してオフィスを運営するためのガイドとしてお役立てください。

オフィスでの火災等のトラブルの原因は?

オフィスで火災が起きる原因をご存じですか?

火災というと、タバコやコンロ、ストーブからの出火をイメージするかもしれません。しかし、実は「会社には火の気がないから火災とは無縁」という考え方にはリスクがあります。

オフィスで起きる火災の主な原因は、コンセント・差し込みプラグ・コードなどの配線器具、蛍光灯やLEDなどの照明器具、あるいは充電式電池(モバイルバッテリー)などです。どのオフィスにもある身近なところから、電気火災が起きる可能性があります。

東京消防庁が発表した令和3年中の電気火災の原因は、「維持管理不適」が38%、「取扱方法不良」が26%、「設置(取付)工事方法不良」が5%、「構造機構不良・改悪する」が5%となっており、ほとんどが使用者の取り扱いに起因しています。(※)

火災が発生すると、企業の財産や情報を損失するリスクを伴うとともに、最悪の場合は居合わせた人にも被害を与える危険があります。コンセントに埃がたまっていないか、コードが折れ曲がっていないかなどを常に確認し、異変を感じたら放置せずすぐに対処しましょう。

(※)参考:東京消防庁「電気火災を防ごう 1.出火原因別発生状況」

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オフィスで火災が発生した際の損害額

オフィスで火災が生じた場合、どのような損害が生じるのでしょうか。

オフィスの性質上、火災が自社のビジネスに与える損失は計り知れません。さらに、オフィスビルの場合は貸主への損害、他テナントへの損害が生じる可能性があります。

このような場合、修繕費用や損害賠償にかかる費用をすべて自社で賄うのは難しいことが多いです。だからこそ、火災保険に加入しておき、万が一の事態に備える必要があります。

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貸主や他テナントへの損害賠償責任

自社の家財や情報資産が損失されるリスクだけでなく、建物や他のテナントへの影響も考慮しなければなりません。自社が火元となって火災を引き起こした場合、貸主や他テナントへの損害補償責任が問われることがあるのでご注意ください。

具体的には、オフィスビルの修繕費、他テナントの家財や事業に及ぼした損害などの賠償が求められる可能性があります。自社の損害だけでなく、他社の損害まで賠償するとなると、その損害額は非常に大きなものとなる可能性が高いです。

これらのリスクに備え、十分な補償を備えた火災保険に加入することは不可欠といえます。

火災保険への加入は法律上は不要

火災保険への加入に法的な義務があるかというと、そうではありません。火災保険はあくまで任意のものであり、ご自分の判断で火災保険を利用する必要があります。

法的な義務がないとはいえ、火災保険はオフィス資産の保護と経済的損失の防止として、非常に重要な要素です。

自社が火元になった場合だけでなく、ほかの物件での火災により、自社が被害を受けることもあります。日本には「失火責任法」という法律があり、出火原因が火元の過失であれば、火元の賠償責任は免除されます。ですから、火元の賠償責任が問われなかった場合、ご自身の会社に及んだ損害の復旧費用はご自身で賄う必要があるのです。

自社から火災が発生するリスク、あるいは自社が火災の被害に遭うリスクの双方に備えて、火災保険に加入しておく必要があるでしょう。

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契約書上で火災保険加入必須としていることが多い

賃貸オフィスの場合は、不動産や内装、設備を保護するための安全策として、借主が火災保険に加入することを契約条件としていることが多いです。

貸主側で、加入すべき火災保険を指定しており、賃料とともに火災保険料を支払う仕組みになっている物件も少なくありません。契約の際は、どのような補償内容の保険に加入するのか確認しておくとよいでしょう。

なお、火災保険の対象となるのは、基本的には火災、落雷、破裂・爆発による損害であることが多いです。そのほか、水災や風災、盗難や事故も対象になるなど、保険によって契約内容は異なります。

火災保険の種類は3つ

では、オフィスで入るべき火災保険にはどのようなものがあるのでしょうか。

  • ・借家賠償責任保険
  • ・個人賠償責任保険
  • ・家財保険

上記についてそれぞれご紹介します。

なお、保険の名称は上記の通りとは限りません。保険会社や商品によって、名称も違えば、どのような損害が補償の対象となるかも変わってきます。しっかりと賃貸借契約に含まれる保険や、加入する保険の範囲を確認しておきましょう。

火災保険

①借家賠償責任保険(オーナーへの損害補償)

賃貸借契約で、加入が義務付けられている火災保険の中には、借家賠償責任についての特約が含まれていることがほとんどです。

つまり、賃貸オフィスの入居者が、入居している物件を破壊・損傷してしまった際に、貸主(オーナー)に生じた損害を賠償する保険です。

賃貸オフィスの場合は、この保険が契約内容に含まれていると思われますが、念のために保険内容を確認しておきましょう。

②個人賠償責任保険(他テナントへの損害補償)

個人賠償責任保険とは、第三者への損害賠償が必要になったときに使える保険です。借家賠償責任保険は貸主への補償であるのに対して、個人賠償責任保険はほかのテナントや近隣住民など、第三者への損害賠償も補償の対象となります。

原因は火災に限らず、自社に起因して他テナントに損害が生じた場合、損害賠償が求められることがあります。そんなとき、こういった第三者への補償が保険に含まれていれば、保険内容に応じて保険金が支給されます。

③家財保険(自身の家具に対する補償)

自社内のデスクや椅子などの家具、コンピューターなどのIT機器、それ以外にもオフィスでは価値のあるものを多く保有しています。火災、水漏れ、盗難などのリスクから生じる物的損害に対応するのが「家財保険」です。

賃貸オフィスではなく、法人が建物を所有している場合は、この家財保険の重要性は高まるでしょう。建物、設備、什器、備品、商品・製品など、所有しているものが補償の対象となるため、特に資産価値の高い建物や設備には保険をかけておくことが大切です。

もちろん、賃貸オフィスの場合も、大切な什器や備品が損傷、あるいは盗難に遭ったときのために、家財保険に入っておくとよいでしょう。

そのほか、自社に発生した損害を補償する保険として、災害によって営業できなかった期間の不利益を補償する「休業損害の補償」があります。休業による利益の減少、休業中も発生する人件費などの固定費、営業を続けるための仮店舗の設置費用、営業再開時にかかる広告費用など、さまざまな費用を補償する保険です。

このように、「火災保険」といってもさまざまな種類があり、その補償内容や支給される金額、補償の範囲などは保険によって変わります。ご自身の会社がどのような保険に入っているかをしっかりと確認し、必要があれば追加で保険に加入するなど、想定されるリスクを管理する必要があるでしょう。

火災保険の相場

損害保険料率算出機構が発表した火災保険統計(※)によると、オフィスビルや学校などの一般物件が支払う火災保険料の平均は、1件当たり約12万円。

ただし、この金額はオフィスビルの所有者側が入る、自分の建物を守るための火災保険の金額です。では、入居するテナント側が支払う保険料の相場はどのくらいなのでしょうか。

(※)参考:損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況」

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テナント保険料の平均は22,762円

賃貸保険を取り扱う「エイ・ワンダイレクト」の発表(※)によると、オフィス・事務所向け保険「テナント保険」の2018年契約実績では、什器・備品の補償額の平均が380万円となりました。これに対する、テナントが支払う保険料の平均は、1年間で22,762円。契約年数によっても、1年あたりの保険料は変わってきます。

  • ・契約期間1年:17,952円
  • ・契約期間2年:25,252円 (年間 12,626円)

(※)参考:エイ・ワンダイレクト「2019年版 オフィス・事務所の火災保険料の相場を調べてみました」

火災を起こさないために今日からできる対策

予期せず発生する火災は、企業経営に致命的なダメージやトラブルを引き起こす可能性があります。

オフィスで起きる火災の主な原因は、配線や照明による「電気火災」です。IT機器をしっかりと管理し、特に配線類の使い方には注意しましょう。

電源プラグをコンセントやテーブルタップに差し込む際に、アース線やヘアピンなどが挟み込まれると、ショートして出火につながる危険性があります。配線周りはきちんと整理し、使わないアース端子には絶縁保護カバーを必ず着けましょう。

また、テーブルタップの容量を超えたタコ足配線や、古くなった差し込みプラグの緩み、長年の使用による内部配線の劣化など、配線周りにはさまざまな危険がありますので、定期的な点検や整理整頓を行うことが重要です。

発熱や変色などの異変を感じたら、すぐに使用を中止し、必要に応じてメーカーに問い合わせるなどの対策を講じましょう。

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トラッキング現象による火災を防ぐためのポイント

また、コンセントに差し込んだプラグに綿埃が付着し、湿気を帯びて繰り返しスパークすることが出火につながる「トラッキング現象」が原因の火災もあります。

近年、延長コードの差込みプラグや電気機器の電源プラグのトラッキング現象による火災が増加しています。家具などの陰に隠れた場所で発生すると、思わぬ被害につながることもあるので注意が必要です。

埃や湿気の多い環境で使われているものや、家具の陰に隠れているものには注意し、定期的に乾いた布などでの清掃を行いましょう。また、差込みプラグは、使用時以外はコンセントから抜くようにしましょう。

(※)参考:東京消防庁「電気火災を防ごう 3.トラッキング現象による火災」

オフィスの保険に関するまとめ

オフィス・事務所を運営するうえで、火災保険は避けて通れない項目です。

賃貸オフィスの場合は、賃貸借契約の中に保険加入の義務が含まれている可能性が高いです。一方で、保険によって補償の内容は大きく変わります。移転などで賃貸借契約を結びなおす場合は、その都度保険の内容を確認し、必要に応じて任意保険にも加入しましょう。

なお、火災保険にはさまざまな名称があります。保険会社によって、店舗総合保険、企業総合補償保険、ビジネス保険など、さまざまな名称がありますが、中身を見てみると火災保険ということも多いです。広い意味で「損害に備える保険」=「火災保険」と考えてよいでしょう。

複数の保険に入っている場合は、保険の範囲が重複していないかも含めて、しっかりと内容を確認しておきましょう。

オフィスの保険に関する
よくある質問

クエスチョンマークシェアオフィスやレンタルオフィスの場合、火災保険に加入すべきですか?

アンサーマーク基本的には、シェアオフィスやレンタルオフィスでは「サービス利用料金」を支払う契約となっており、賃貸借契約ではないため、火災保険への加入は義務付けられていません。しかし、万が一火災を起こしてしまったり、何らかの理由で建物を傷つけてしまったりした場合、契約内容によってはその修理費用や原状回復費用を求められます。法人として、あるいは個人事業主として、任意で損害保険に加入しておくことをおすすめします。

クエスチョンマークリースで借りている備品も家財保険の対象になりますか?

アンサーマークリースで借りている什器や備品に損害が及んでしまった場合の補償については、加入している保険によって補償の範囲が変わりますので、保険の契約内容をご確認ください。