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執務室をデザインするコツ|
オフィスレイアウトの基本を解説

作成日:2024.3.12更新日:

オフィスづくりを考える中でも、社員が多くの時間を過ごす「執務室」のレイアウトは、重要な課題です。

この記事では、執務室のデスクの配置パターンや、オフィスレイアウトの流れ、デスクや通路の基準寸法など、執務室をデザインするうえで知っておくべきポイントをご紹介します。

執務室とは?

執務室とは、オフィスの事務作業をするスペースのこと。「事務室」や「作業スペース」と呼ばれることもあります。

会議室や休憩室といった、オフィス内に数あるスペースの中でも、社員が最も多くの時間を過ごすのが執務室でしょう。この執務室を快適に、働きやすくデザインすることで、会社全体の業務効率化やコミュニケーションの活性化につながります。

執務室に最低限必要な什器は、作業用のデスクと椅子です。その他、PCやコピー機、電話などのOA機器や、パーテーション、観葉植物など、必要に応じて空間を使いやすくするための備品を導入します。

執務室

執務スペースのデスクのレイアウトパターン

執務スペースの構成要素として、欠かせないのが「デスク」と「椅子」です。

デスクのレイアウトを考えるうえでは、「作業効率」と「スペース効率」を意識しましょう。

まず、作業効率が上がるレイアウトは、業務によって異なります。

例えば、チーム内の報連相が頻繁に必要な仕事なら、いつでも社員同士で話し合えるよう、相手の顔がすぐに見えるようなレイアウトがおすすめです。

一方で、黙々と個人作業をしたり、プライバシー対策が必要になったりするような仕事なら、パーテーションなどで視界を遮るなど、視線が合わない工夫が求められます。

また、限られたオフィス空間で、スペース効率のよいレイアウトを見つけたいものです。業務内容や事業の方針に応じて、「作業効率」と「スペース効率」のバランスが取れるようなレイアウトを考えましょう。

ここでは、執務スペースのデスクをレイアウトする8種類のパターンをご紹介します。

レイアウト

1.対向型

対向型とは、デスク同士が向かい合っているレイアウトです。

向かい合う2つのデスクを1組と考えると、いくつかの組を集めて、島のように並べられていることが多いです。このことから、対向式は「島型レイアウト」とも呼ばれます。

6~10名の社員が同じ島で、向かい合って仕事をできるので、コミュニケーションを取りやすいのが特長です。一般的な執務室でよく採用されています。

しかし、向かいの人の視線が気になったり、隣の席の人とのプライバシー確保が難しかったりする難点もあります。高い集中力を要する作業や、プライバシー性の高い仕事をする社員には、不向きなレイアウトかもしれません。

2.同向型

社員がみんな、同じ方向を向いて作業するレイアウトです。

学校の教室に机が並んでいるように見えるので、「スクール型」と呼ばれることもあります。

電話業務の多いコールセンターや、窓口対応のある銀行の店舗などでは、この同向型がよく使われています。また、セミナーや研修をよく行う企業で、セミナー室と執務室を兼ねている場合も、このレイアウトが採用されることがあります。

3.背面型

背面型、あるいは背面対向型と呼ばれるレイアウトでは、デスク同士が背を向けるように設置されています。

デスクの前方は、壁に面しているか、パーテーションが設置されているため、「作業中に向かいの人の視線が気になる」ということがありません。

作業中は人と視線が合いませんが、振り返ると簡単に声をかけられるため、集中しつつもコミュニケーションを取りやすいレイアウトとなります。

4.クロス型

4人1組などのデスクの島の向きを、縦横が交互になるように配置するレイアウトです。

例えば、一つのデスクの島では、向かい合った社員が、それぞれ南北を向いているとします。すると、その隣のデスクの島では、向かい合った社員が、それぞれ東西を向きます。

このように、社員の体の向きをばらばらにすることで、よりコミュニケーションを取りやすい、オープンな雰囲気のワークスペースが生まれます。 動線が固定されないため、活気のある印象を与えることができるでしょう。

5.ブーメラン型

ブーメラン型とは、ブーメランのように開いたL字デスクを3つ、向かい合わせて使うレイアウトです。120°に開いた3つのデスクを合わせると、合計360°になり、3人が向き合って作業することができます。

一人当たりのデスクの面積が大きいため、限られたスペースでも広々と作業できるというメリットがあります。また、3人で向き合って作業できるので、少人数でのチーム作業に適しています。その形から、「リンク型」や「亀甲型」と呼ばれることもあります。

6.ブース型

デスク同士をパーテーションで区切り、周囲の視線や音を遮るレイアウトが「ブース型」です。

デスク自体は対向型で並べ、デスクの間にパーテーションを入れることで、半個室のブース型としている場合もあります。あるいは、完全個室のブース型であれば、Web会議や電話もストレスなくできるでしょう。

システムエンジニアやクリエイターなど、集中した作業が求められる職場で採用されることが多いレイアウトです。

通常は同向型などのワークスペースで作業し、集中したいときや電話の際に、別途用意された個室ブースを利用するのもよいでしょう。

7.左右対向型

左右対向型のレイアウトには、間仕切りになるパーテーションやキャビネットを使います。

まず間仕切りを設置して、その一方の面に、デスクの側面が接するように並べます。例えば、デスクの右端が間仕切りに接するようすると、同じ方角を向いたデスクが縦に並び、作業中に前の席の人の背中が見えるようなレイアウトになります。

今度は、間仕切りの反対の面に、デスクの左端の側面が接するようにデスクを並べます。こちらも同様に、いくつかのデスクを並べると、作業中に前の席の人の背中が見えるようなレイアウトになります。

つまり、間仕切りのこちら側と向こう側で、作業する人が反対方向を向くレイアウトです。間仕切りを挟んで、逆の方向を向いたデスクが並んでいる状態になります。

このレイアウトのメリットは、作業中に人と視線が合わないことです。

また、デスクの側面には間仕切りがあるため、プライバシーも保護されます。「クラスター型」とも呼ばれるレイアウトです。

8.卍型

卍型レイアウトは、その名のとおり、4台のデスクを卍型に並べるレイアウトです。

4台のデスクの前方が、それぞれ東西南北を向くように隣接させると、まるで「卍」のマークのように4方向に広がったレイアウトになります。 このように、違う方角を向いた4台のデスクを隣接させるレイアウトが、卍型のレイアウトです。

このレイアウトのメリットは、デスク同士は隣接しているものの、それぞれの顔は違う方角を向くため、集中できる環境が作れる点です。しかし、スペース効率を考えると、少々場所を取るというデメリットもあるでしょう。

働き方で分けるレイアウトパターン

企業によって、働き方は大きく異なります。(強調)「外勤やリモートワークが多い」「内勤が多い」など、企業の状況によって、最適なオフィスのレイアウトが変わってくるでしょう。

例えば、リモートワーク中心で、社員が週に1回しか出社しないとします。そういった方に固定席を用意すると、平日5日間のうち、4日間は空席です。これでは、オフィスの中で使われていない座席が多くなり、スペース効率がよいとはいえなくなります。

毎月、賃料を支払って借りているオフィスですから、できるだけ空間を有効に活用したいものです。また、執務室のレイアウトを見直すことで、休憩スペースや会議スペースを捻出できるなど、社員にとってもメリットが生まれます。

ここでは、いくつかの座席のレイアウトパターンを、それに適した働き方とともにご紹介します。

会社の従業員

固定席タイプ

まず、一般的なデスクのレイアウトとして「固定席タイプ」があります。

これは、座席ごとに利用者が決まっており、毎日同じ席で仕事をする仕組みのレイアウトです。出社する内勤社員が多いような職場では、自席が分かりやすく、書類や小物などをデスクに置ける点が便利です。

また、席が近い社員との会話が増えるため、気軽にコミュニケーションを取れるというメリットもあります。

フリーアドレスタイプ

フリーアドレスとは、自席の位置が決まっておらず、オープンスペースで好きな席を選んで利用できる仕組みです。

リモートワークと出社を併用しており、日によって出社する社員が変わるような会社では、フリーアドレスを採用することで省スペースを叶えられます。また、客先常駐や外回りが多いような企業にもおすすめです。

フリーアドレスタイプの職場では、固定席がないため、持ち運びのできるノートパソコンを使うのがおすすめです。また、デスクに書類や小物を収納できないため、私物を置ける個人ロッカーがあると便利です。

ABWとは

フリーアドレスとよく比較されるのが、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)です。

ABWとは、その日の仕事内容に合わせて、自己裁量で働く時間や場所を選択すること。出社かリモート、あるいはオフィス外のサードプレイスなど、どこで仕事をしてもよいという仕組みです。

また、オフィス内でも執務室だけでなく、個人ブースや共用エリアなど、どこで作業しても構いません。つまり、フリーアドレスをさらに進化させた考え方ともいえるでしょう。

ただし、このABWは、座席のレイアウトというよりは、働き方そのものを指す呼び名です。ABWの働き方を採用している場合は、その仕組みに応じたレイアウトを考えるとよいでしょう。

グループアドレスタイプ

グループアドレスとは、フリーアドレスと同様に、自由に席を選べるタイプのレイアウトです。

フリーアドレスと異なる点は、部署やチームによって、使用できるエリアが決まっていること。例えば、オフィス全体のうち、「Aチームは右側の島、Bチームは左側の島を使う」というように、利用できる大まかなエリアが定められています。 自分の部署やチームに割り当てられたエリアの中で、好きな席を選んで使うことができます。

このレイアウトには、フリーアドレスの自由度を残しつつ、部署内のコミュニケーションを活性化できるというメリットがあります。チームワークや部署内の連携が重要な仕事では、このグループアドレスのメリットが活かされるでしょう。

オフィスをレイアウトする流れ

オフィスのレイアウトを決めるとき、家具や配置から決めたくなるものかもしれません。

しかし、それよりも前に考えるべきことがあります。例えば、オフィスの使用目的や、移動する際の動線を考えずにレイアウトを決めると、使いにくいオフィスになってしまうことも。 コンセプトやゾーニングといった、前準備をしっかりしてから具体的な内装を決めることで、目的に合った理想のオフィスに近づくでしょう。

ここでは、オフィスのレイアウトを検討する流れをご紹介します。

作業の流れ

1.コンセプトを決める

まずは、オフィスデザインのコンセプトを決めましょう。

オフィスのデザインは、従業員のモチベーションだけでなく、来社したお客様や取引先、求人への応募者に対しての会社のイメージを左右します。 企業ブランディングや採用戦略にも関わる部分なので、妥協せずこだわりのデザインを実現したいものです。

会社のコーポレートカラーを壁や内装に取り入れたり、企業イメージに即した雰囲気の家具を選んだりすることで、オフィスが来訪者に与えるイメージは変わってきます。「シックで洗練されたイメージ」「クリエイティブで風通しのよい社風」など、会社のコンセプトをデザインに反映しましょう。

また、ここで決めるコンセプトは、デザインだけでなく機能面にも影響を与えます。

「作業に集中できるオフィス」を目指すなら、静かな執務環境や、個室ブースがあるとよいかもしれません。「気軽に社員同士で話し合えるオフィス」をイメージするなら、ちょっとした打ち合わせができるラウンジや、カフェスペースの導入も候補に挙がります。

来客の多いオフィスなら、オフィスそのものが、自社の商品やサービスを訴求する材料となることも。オフィスの用途や目指す姿を、最初に「コンセプト」として明らかにし、それに沿って内装やスペースの配置を細かく決めていきましょう。

2.オフィス内のゾーニングを考える

オフィス内には、執務室だけでなく、休憩室、会議室、役員室や収納スペースなど、さまざまなゾーンが存在します。

これらの各ゾーンの広さや配置を決めるのがゾーニングです。必要なゾーンを洗い出し、各ゾーンにどれだけの面積を使うのかを決定します。

一般的には、以下のようなゾーンが必要になります。

チェックマーク重要点
  • 執務室
  • 会議室
  • 応接室
  • 休憩室
  • エントランス
  • 複合機などの共用スペース
  • 収納スペース
  • セキュリティスペース
  • 通路

これらのゾーンを洗い出し、どのように配置するかを決めていきます。全体を100%として、「執務室50%、会議室10%……」のように、パーセンテージを決めていく方法もあります。 オフィスに対する執務室の広さは、全体の50~60%が一般的です。

なお、必要なスペースや広さは、それぞれの会社の状況によって変わってきます。ミーティングの多い企業であれば、執務室の広さよりも会議室の数を優先するなど、働き方に適したゾーニングを検討してください。

ゾーニングではセキュリティ対策が肝心

ゾーニングを決めるうえでは、セキュリティ対策が課題となります。

例えば、外部の来客がある動線上に、社内の機密情報を含む書類があるような場合、セキュリティリスクは非常に高くなります。また、社員の住所や給与明細などの個人情報は、限られた人のみがアクセスできるように、厳重に管理しなくてはなりません。

おすすめなのは、セキュリティレベルの段階ごとに、ゾーンを分ける方法です。

チェックマーク重要点

    《セキュリティレベルの例》

  • レベル1:エントランスや会議室など、外部の人も入れるゾーン
  • レベル2:執務室など、社員のみが立ち入るゾーン
  • レベル3:サーバールームや情報管理室など、許可を得た社員のみが入れるゾーン

このようにセキュリティレベルを分けることで、「レベル1のエリアには重要書類を持ち込まない」「レベル3のエリアは施錠する」といったセキュリティ対策が取れるようになります。

動線計画を立てる

執務室や会議室だけでなく、忘れがちな「通路」も一つのゾーンです。通路を考えておかないと、ゾーン間の移動がしにくくなったり、窮屈なオフィスになったりすることもあります。通路の面積や配置まで、ゾーニングの際に整理しておきましょう。

人が動く経路を考えることを、「動線計画」といいます。例えば、応接室にお客様を通す際に、社員たちが作業する執務室の中を通過するような動線は、適切な動線計画ができているとはいえません。あるいは、執務室からコピー室など、よく使う場所への動線も、スムーズに移動できるような経路を考えたいところです。

コピー機やシュレッダーなどの設備の配置や、各ゾーンのセキュリティレベルを考慮し、使いやすさと機密性を兼ね備えた動線を目指しましょう。 また、避難経路や防災用品の保管場所を踏まえ、いざというときに避難しやすい動線を設計することも大切です。

ゾーニング・動線計画を図面化する

家具の配置や通路の幅は、頭の中でイメージしているだけだと、実際に搬入したときに問題が生じることがあります。

例えば、収納家具の扉を開けるスペースを考慮できておらず、「扉を開けるとほかの家具にぶつかってしまう」といったこともあり得ます。扉の開閉方向(右開き、左開き)や、コンセントの位置など、実際に使ったときの動線や配線を確認しておきましょう。

自分で図面化を行う場合は、プロのようにミリ単位での図面を起こすのは難しいでしょう。 大まかな図面であっても、人の動線に問題がないか、家具同士の運用に支障がないか、事前にシミュレーションしておくことが大切です。

3.オフィス内の寸法を測る

実際に各エリアの広さを決めたり、家具を配置したりするうえでは、オフィス内の寸法を測る必要があります。

複数の居室がある場合は、各室の寸法やドアの幅と配置を図り、適切な家具の大きさや数量を検討しましょう。また、オフィスの一人当たりの面積や、通路幅などもこの時点で明らかにしておきましょう。

執務スペースの広さの目安

スペースを有効に使い、かつ、快適に働ける執務室にするためには、最適な広さを社員一人ひとりに割り当てなくてはいけません。

オフィスの1人当たりの広さは、約3坪が目安といわれています。

その中で、デスクの大きさや通路の広さを調整しながら、バランスよく配置する必要があります。

デスクの広さは、1人当たり120cm×70cmがスタンダードです。なお、デスクのサイズは、職種によって以下のように変わってきます。

タイプ 横幅 奥行き 職種
コンパクト 100cm 60cm~70cm 営業など
外勤が多い職種
スタンダード 120cm 70cm 事務など
内勤が多い職種
ゆったり 140cm以上 70~80cm 複数モニターを使う
エンジニアなどの職種

執務室内の通路幅の基準寸法

基準寸法とは、「通路幅」や「机と机の間」といった、動作空間の広さの目安となる寸法です。この基準寸法を参考にレイアウトすることで、スペースを有効に使うとともに、「通路が狭くて移動しにくい」といった事態を防ぐことができるでしょう。

執務室内の通路幅の目安は、以下のようになっています。

チェックマーク重要点
  • 人が1人通れる通路幅:60cm~
  • 人が2人通れる通路幅:120cm~
  • 人がよく通るメイン通路の幅:160cm~

人が1人通るための最低限の通路幅は60cm。少し余裕を持って通るには、80cm程度の広さがあると安心です。

また、2人以上の往来が予想されるような通路であれば、最低でも120cmの広さが必要になります。人通りが多いような入り口周辺のメイン通路は、160cm以上の幅があると気軽に出入りできるでしょう。

机周辺の通路幅の基準寸法

執務室に特有の基準寸法として、机や座席周辺の通路幅の目安をご紹介します。

チェックマーク重要点
  • ①机と机の間の通路幅:90cm~
  • ②座席と座席の間の通路幅:160cm~
  • ③机と壁の間の通路幅(動線の場合):110cm~
  • ④机と壁の間の通路幅(動線ではない場合):90cm~
  • ⑤座席と収納の間の通路幅:160cm~

①机の前面と前面や、机の前面と側面の間など、座席がない面の間を通る幅の目安は90cm以上です。人が1人通れる60cmに加えて、デスクの作業を邪魔しないだけのスペースを確保しましょう。

②机と机が背中合わせになっている場合、従業員1人が座席に座ったときの奥行きは約50cmです。背を向けた座席同士の間を通る場合は、座席の奥行きである50×2=100cmに、人が1人通るための60cmを足して、160cm以上が机と机の幅の目安となります。

③座席の背面と壁の間が、人が通る動線になっている場合、座席の奥行きの50cm+人が1人通るための60cmで、110cm以上の通路幅が必要となります。

④座席の背面と壁の間を人が通らない(動線ではない)場合、座席の奥行きの50cm+椅子を引くための40cmで、90cm以上が通路幅の目安です。

⑤座席の後ろがキャビネットなどの収納になっている場合、着席していても収納を使えるだけの広さが必要です。着席時の奥行き50cm+収納を使う人が立つスペース60cm+収納の引き出しや扉の奥行き50cm=160cmが、座席の後ろに収納がある場合の通路幅となります。

4.オフィス家具の種類や配置を決める

ゾーニングで必要なゾーンを洗い出し、さらに具体的な通路幅やエリアの面積まで決まったら、導入する家具の種類を検討します。

家具は、デザイン面だけでなく、使いやすさにも大きな影響を与えます。デスクの大きさや形、収納の量や冷蔵庫、ハンガーラックといった什器など、必要な家具のモデルや配置を決めていきましょう。

購入を検討している家具の寸法を調べ、通路幅や動線、扉の開閉に影響がないかも事前に確認しておきましょう。

デスクの種類

執務室で重要なのは、どのようなデスクを使うかです。

一般的なのは、引き出し付きの単体デスクです。1人1台で使うため、ロッカーがなくても私物を収納できるほか、単体で移動させやすいというメリットがあります。

あるいは、大型のロングデスクを導入し、大きな机を複数人で使う方法もあります。フリーアドレスの職場に適しており、会議用などに転用して使うこともできます。

また、立ったまま作業や打ち合わせができるスタンディングデスク、移動が容易なキャスター付きデスクなど、デスクの形状もさまざまです。

どのデスクを導入するかで、オフィスの雰囲気やレイアウトもガラッと変わります。一度購入すると、買い替えがしにくい大きな備品となるので、事業方針に沿った適切なデスクを導入しましょう。

オフィス・執務室をデザインするポイント

オフィスや執務室をデザインするとき、機能性が高く、なおかつ来客者や従業員にとって魅力的な空間にするために、意識したいポイントをご紹介します。

また、オフィスのレイアウトを考えるうえで遵守すべき法令もありますので、あわせて確認しておきましょう。

ポイント

オフィスのコンセプトに沿った内装を選ぶ

オフィスの印象は、会社そのものの印象にもつながります。最初に決めた、オフィスデザインのコンセプトに沿って、効果的な内装を選びましょう。

特に意識したいのは、エントランス周辺の内装です。エントランスは、お客様や取引先の方が来るときに、まず目にする場所。コーポレートカラーやロゴを取り入れ、印象に残る内装を目指したいものです。

また、オフィスのコンセプトによって、ゾーニングやレイアウトも大きく変わります。内勤者が多い場合は「固定席+複数の小会議室」、外勤者が多い場合は「フリーアドレス+オープンな会議室」、来客者が多い場合は「セミナールーム+応接室」など、働き方に応じて利用しやすいレイアウトを考えましょう。

社員の働きやすさを意識する

執務室で最も重要なのは、社員が快適に働けることです。コミュニケーションの活性化、パフォーマンスや社員満足度の向上など、執務室のデザインは社員の働き方を大きく左右します。

作業内容に応じて、適切な種類や大きさのデスクを選びましょう。また、業務中の電話の有無や、コミュニケーションの必要性によって、デスクの配置パターンも変わってきます。作業中にほかの社員の視線が気にならないように、目線を遮るパーテーションを導入するなど、ストレスなく働くための工夫も大切です。

また、観葉植物などの緑があることで、ストレスが軽減されるという研究もあります。さらに、一部の植物は、二酸化炭素だけでなく空気汚染物質を吸収する空気清浄効果があるとされています。快適かつストレスフリーに働ける環境づくりで、業務効率化やパフォーマンス向上を目指しましょう。

整理整頓しやすいオフィスにする

乱雑なオフィスでは、集中力も下がってしまいます。整理整頓が容易で、散らかりにくいオフィスにするためには、最初の仕組みづくりが重要です。

決まった収納場所を決める

書類フォルダや細かい備品などの収納場所を定め、使ったら元の場所に戻すルールを決めましょう。

筆記用具やクリップなど、細かい備品は一か所にまとめ、コピー用紙などはコピー機周辺の使いやすい場所に設置するのがおすすめです。

大型パンチやセロテープなどの文房具は、「型抜きシート」や「ツール管理シート」と呼ばれる、発泡ポリエチレンやウレタンでできたシートで収納することもできます。方眼ミシン目が入っており、モノの形に合わせて型抜きすることで、すっぽりはまる備品の定位置を決められます。

書類は電子化する

書類のペーパーレス化を進めることで、省スペースになるとともに、整理整頓も容易になるでしょう。

例えば、「1年間使わなかった書類は電子化する」など、期限を決めて書類を保管する必要性を見直しましょう。必ずしも紙で保管する必要がない書類であれば、積極的に電子化を進めることで、オフィスのスペースを有効活用することができます。

オフィスレイアウトにまつわる法令を遵守する

オフィスレイアウトを考えるうえでは、知っておかなくてはいけない法令がいくつかあります。

主に知っておくべき法律の知識は、建築基準法、消防法、労働安全衛生法による規制です。 オフィスのデザインに関連がある、一人当たりのオフィス面積についての決まりや、間仕切りについてのルールを確認しておきましょう。

建築基準法による規制

建築基準法では、最低限確保すべき、オフィスの廊下の幅が決められています。

廊下の両側に部屋がある場合、廊下の幅は160cm以上にしなくてはいけません。また、廊下の片側のみに部屋がある場合、必要な廊下の幅は120cm以上となります。

ただし、ここでいう廊下とは、居室から非常階段までの経路など、避難経路となる通路のことです。居室内の通路については該当しないので、ビルの一室などをオフィスとして借りている場合は、特段の配慮は必要ないでしょう。

消防法による規制

執務室のレイアウトを考える中で、間仕切りやパーテーションを設置したいと思うこともあるでしょう。そんなときに知っておくべきなのは、消防法による間仕切りについての規制です。

天井まで届く間仕切りを設置する際は、消防署で手続きをしなくてはいけません。 天井と間仕切りの間に隙間のない、パーテーションや造作壁を増設する場合は、「防火対象物工事」と見なされて届け出が必要になるのです。

このように、天井まで届く間仕切りで仕切られた部屋は、個室となるため「火災報知器」や「スプリンクラー」などを設置する義務も発生します。

Web会議などで使われる個室ブースでも、法律上「居室」と見なされる場合は、同様の設備が必要になります。

労働安全衛生法による規制

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康、快適な職場環境を守るための法律です。

オフィスレイアウトを考えるうえで特に問題になるのが、従業員1人当たりのオフィスの広さです。

労働安全衛生法では、労働者1人につき、気積10㎥以上を確保することが決められています。10㎥とは、天井の高さを2.5mとした場合、1人当たり4㎡(約1.2坪)の広さが必要ということです。

ただし、労働安全衛生法で定められているのは、あくまでも最低限の広さです。一般的には、最低でも2~3坪の広さが割り当てられることが多くなっています。

また、オフィス内の照明の明るさについても、労働安全衛生法で定められたルールがあります。照度基準は、「一般的な事務作業」については 300 ルクス以上、「付随的な事務作業」については 150ルクス以上です。

付随的な事務作業とは、資料の袋詰めなど、文字を読み込む必要がない事務作業のこと。照度不足による眼精疲労や健康障害を防ぐために、十分に明るい作業環境を用意する必要があります。

その他、休憩室やトイレの設置についてなど、オフィスに関するいくつかのルールが法令で決められています。オフィスのレイアウトを考えるうえでは、オフィスの衛生基準や安全基準に関する法令も知っておきましょう。

執務室レイアウトのお悩みはプロに相談

執務室をレイアウトするうえで、内装工事やLAN配線の電気工事など、業者を入れての工事が必要になることもあります。

工事業者選びが、内装の仕上がりだけでなく、退去費用に関わってくることも。十分な事例や実績を有している、信頼できる業者に工事を依頼しましょう。

また、ビルによっては、工事業者をオーナー側が指定することがあります。 工事前にオーナーや管理会社に相談しておくことで、トラブルを避けることができるでしょう。

デスクの配置変更などの、ちょっとした模様替えであれば、社内で対応できることでしょう。しかし、オフィスの大幅なリニューアルや、新規オープン・移転などの場合は、専門の業者にサポートしてもらうことも選択肢となります。

業者によっては、オフィスのコンセプトに沿ったデザインやレイアウトを提案してくれる場合も。オフィスレイアウトにかける予算や、業者に依頼する範囲を整理し、自社の状況に適した業者を選びたいものです。

ビジネスマンのプレゼン

執務室レイアウトに
関するまとめ

この記事では、デスクを配置するレイアウトのパターンや、「固定席」「フリーアドレス」といった座席の運用方法、オフィスレイアウトにまつわる法律の規制など、オフィスレイアウトで知っておくべき知識を幅広くご紹介しました。

オフィスの新設や移転の際、頭を悩ませるのが内装のレイアウトです。特に、従業員が多くの時間を過ごす執務室のレイアウトは、会社全体の売り上げやパフォーマンスを左右するかもしれません。

快適に働ける環境を第一に考え、会社に行くのが楽しみになるようなオフィスを心がけましょう。

執務室レイアウトに関する
よくある質問

クエスチョンマーク執務室レイアウトの際、自分で図面を作成する方法は?

アンサーマークよく使われているのは、ExcelやPowerPointです。方眼に図形を配置して、大まかなレイアウトを図面にすることができます。より正確な図面を作成するには、専用のソフトを使用するか、プロの業者に依頼する必要があります。

クエスチョンマーク執務室でできる感染症対策はありますか?

アンサーマーク1人当たりのワークスペースにゆとりを持たせ、定期的な換気を行うことで、密閉や密接を避けることができます。また、デスク間に飛沫を防止するパーテーションを設けることでも、感染症対策になるとともに、周囲の視線や音のストレスを和らげることができるでしょう。