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賃貸事務所の「グロス」と「ネット」とは?不動産の利回り計算法

作成日:2024.5.9更新日:

不動産業界では、よく「グロス」と「ネット」という言葉が使われます。

しかし、不動産でグロスやネットという場合、その意味は一つではありません。不動産の面積を示す場合もあれば、不動産投資の利回りについて語られていることもあります。

ここでは、不動産業界で使われる用語の「グロス」と「ネット」について、面積と利回りという二つの観点から、詳しく解説します。

不動産用語のグロスとネットとは?それぞれの違いを解説

そもそも、英語の「グロス(gross)」と「ネット(net)」には、以下のような意味合いがあります。

  • グロス(gross):「総額」「総計」
  • ネット(net):「純益」「正味の数量」
  • つまり、グロスといえば「諸々を含んだ全体像」、ネットといえば「経費などを除外した純粋な金額」というイメージができるでしょう。

    一つ目の用例は、面積についてです。賃貸事務所や賃貸物件など、共用部分と専有部分を区別する用語として、「グロス面積」「ネット面積」という言葉が使われます。

    二つ目の用例は、利回りについてです。不動産投資の利回りを語るときに、グロス利回り(表面利回り)とネット利回り(実質利回り)という用語が使われます。

    これらの意味の違いについて、以下で順番にご紹介します。

    チェックマーク重要点

    「グロス(gross)」と「ネット(net)」とは

  • グロス(gross):「総額」「総計」
  • ネット(net):「純益」「正味の数量」
  • 計算機

    賃貸事務所の「グロス面積」と
    「ネット面積」

    「グロス面積」と「ネット面積」という言葉は、主に賃貸事務所を契約する際に使われます。

  • グロス面積:エレベーターや廊下などの「共用部分」を含む面積
  • ネット面積:実際に使える「専有部分」の面積
  • 例えば、グロス面積が70坪、ネット面積が50坪という物件があったとします。この場合、テナントとして使える専有部分は、ネット面積の50坪です。グロス面積の70坪から、専有部分の50坪を引いた20坪が、このビルの共用部分となります。

    このように、エントランス、廊下、共用トイレ、給湯室といった、共用部分を含めた面積が「グロス面積」です。

    一方で、テナントが入居する事務所に当たる、専有部分の面積が「ネット面積」です。

    チェックマーク重要点

    「グロス面積」と「ネット面積」とは

  • グロス面積:エレベーターや廊下などの「共用部分」を含む面積
  • ネット面積:実際に使える「専有部分」の面積
  • 賃貸事務所の「グロス契約」と
    「ネット契約」

    賃貸には、「グロス契約」と「ネット契約」という考え方があります。

    賃貸事務所を契約すると、テナントとなる専有部分だけを契約するというイメージがありますが、そうではありません。

    「グロス契約」の場合は、先ほどご紹介した「グロス面積」を契約します。つまり、専有部分だけでなく、共用部分の面積も、賃貸契約の中に含まれているのです。トイレや水回りの配置により、共用部分と専用部分の線引きがしにくい物件では、このようにグロス契約となるケースがあります。

    一方で、専有部分だけの契約は「ネット契約」と呼ばれます。

    グロス契約とネット契約では、実際にオフィスとして使えるスペースの面積が変わってきます。「思ったよりもオフィスが狭い」といった事態を避けるために、事前にグロス契約かネット契約かを確認しておきましょう。

    不動産の「グロス利回り」と「ネット利回り」

    不動産投資とは、マンションやアパートなどの不動産を購入し、家賃収入から利益を得る仕組みの投資のことです。収益物件への投資を考えるうえで、必ず目にするのが「利回り」についての表記です。

    投資によって得られる収益を計算するには、利回りという言葉を使います。利回りは、利益を費用で割ることで算出できますが、いくつかの種類があることを知っておきましょう。

    ここでは、不動産投資で使われる「グロス利回り」「ネット利回り」という用語についてご紹介します。

    デスク

    グロス利回りとは?

    グロス利回りとは、いわゆる「表面利回り」です。

    表面利回りとは、物件の価格に対して、どの程度の家賃収入が得られるかという、表面的な収益性を表す指標です。

    ここで支出として考えるのは、物件の購入価格のみ。実際に資産を運用するうえで発生する、税金や管理費は加味されていない点に注意が必要です。

    グロス利回り計算法

    グロス利回り(表面利回り)は、以下のように計算できます。

  • グロス利回り = 年間賃料収入 ÷ 物件購入価格 × 100
  • 例えば、6,000万円で購入した物件から、年間600万円の家賃が得られているとします。この場合のグロス利回りは、600万÷6,000万×100=10%です。

    上記は、1年あたりの利回りです。つまり、5年間で50%、10年間で100%の投資費用が回収できることになります。ただし、グロス利回りには運用上の諸費用が含まれていないため、あくまで表面的な収益の目安となります。

    チェックマーク重要点

    グロス利回り計算法とは

  • グロス利回り = 年間賃料収入 ÷ 物件購入価格 × 100
  • グロス利回りの注意点

    不動産投資では、不動産を運用するうえでの諸費用がかかります。

    例えば、初期費用として各種税金や仲介手数料、ローンの保証料、火災保険料などがかかります。また、ランニングコストとしても各種税金や火災保険料、修理やクリーニングの費用が発生します。

    しかし、グロス利回りで支出として考慮するのは、「物件の購入価格」のみ。実際には、上記のような諸費用がかかるので、グロス利回りのままの収益を得ることは、まず難しいといえます。

    では、なぜグロス利回りという指標があるのでしょうか? 投資物件の紹介などでは、一般的にグロス利回りが使われています。これは、物件を検討する段階では、初期費用やランニングコストを正確に見極めるのが難しいから。誰でも、ざっくりと利回りのイメージを持つために、グロス利回りという考え方が用いられています。

    具体的に物件を決める際は、グロス利回りだけでなく、次に紹介する「ネット利回り」とのバランスも考えることをおすすめします。

    ネット利回りとは?

    ネット利回りとは、いわゆる「実質利回り」です。

    実質利回りとは、不動産経営にかかる諸経費を考慮した、より現実的な利回りになります。 物件の購入価格に加えて、初期費用やランニングコストを加味して計算するため、実際の利回りにより近い収益性を見ることができます。

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    ネット利回り計算法

    ネット利回り(実質利回り)は、以下のように計算できます。

  • ネット利回り =(年間賃料収入-年間経費)÷(物件購入価格+購入時諸経費)× 100
  • 例えば、6,000万円で購入した物件から、年間600万円の家賃が得られているとします。さらに、年間経費が180万円、購入時諸経費が600万円かかったと仮定します。

    この場合のネット利回りは(600万 - 180万)÷(6,000万 + 600万)×100=約6.4%です。このように、ネット利回りは初期費用や諸経費を加味するため、グロス利回りよりも数%減少します。

    チェックマーク重要点

    ネット利回り計算法とは

  • ネット利回り =(年間賃料収入-年間経費)÷(物件購入価格+購入時諸経費)× 100
  • ネット利回りの注意点

    ネット利回りを計算する際は、諸経費を考える必要があります。

    しかし、全ての費用を洗い出すのは難しいものです。予期せぬ出費が生じた場合、実際の利回りは下がってしまう可能性があります。できるだけ詳細に、考えられる経費を全て網羅しなてはなりません。

    代表的な不動産投資にかかる経費には、以下のようなものがあります。

    チェックマーク重要点

    <初期費用>

  • 仲介手数料
  • ローン関連費用
  • 司法書士への報酬
  • 各種税金
  • 火災、地震保険料 など
  • <ランニングコスト>

  • 各種税金
  • 火災、地震保険料
  • 共用部分の水道光熱費や清掃費
  • 賃貸管理手数料
  • 管理費、修繕積立金
  • 広告費 など
  • また、不動産物件は、いつも満室とは限りません。空室率も考慮して、年間の賃料収入を予測する必要があります。

    こういった収入と費用の金額を細かく予測することで、より実態に近い利回りを求められるでしょう。

    不動産用語のグロスとネットに関するまとめ

    不動産業界で「グロス」「ネット」という言葉が使われる場合、面積のグロス・ネットなのか、利回りのグロス・ネットなのかで、意味が変わります。

    グロス面積とは、共用部分を含んだ物件の面積のこと。一方で、ネット面積とは、共用部分を除く専有部分の面積を指す言葉です。

    また、グロス利回りとは、いわゆる「表面利回り」です。それに対して、ネット利回りとは「実質利回り」のこと。グロス利回り・ネット利回りの用語は、主に不動産投資の利回りを考えるときに使われます。

    2種類の意味を持つ、不動産業界のネットとグロス。この記事で得た情報を、賃貸事務所や収益不動産を選ぶ際にお役立ていただければ幸いです。

    不動産用語のグロスとネットに関するよくある質問

    クエスチョンマーク賃貸事務所のグロス契約とネット契約はどちらがお得ですか?

    アンサーマーク グロス面積を借りる契約を「グロス契約」、ネット面積を借りる契約を「ネット契約」といいます。 面積や賃料が同じであれば、自由に使える専有部分が広いのはネット契約ですから、ネット契約のほうがお得になるでしょう。 グロス契約とネット契約の物件を比較する際は、自由に使えるネット面積に対する賃料を比較することをおすすめします。

    クエスチョンマーク不動産投資のネット利回りは、実際の利回りと同じですか?

    アンサーマークネット利回りは、グロス利回りよりも正確ですが、あくまでも購入時点での予測の数値です。 例えば、入居率を予測してネット利回りを計算しても、思うように入居者が入らず、実際の利回りは変わってくる場合があります。