01 | 家賃保証会社とは
家賃保証会社と連帯保証人とは?
物件を借りるときの必要な知識
作成日:2024.5.9更新日:
賃貸物件を借りるとき、「家賃保証会社」の利用や「連帯保証人」を立てることが求められます。
保証会社を利用するとなると、入居時や更新時に保証料を払う必要が生じます。そのため、できることなら保証会社なしで物件を借りたいと思う方もいるのではないでしょうか。しかし、貸主だけでなく借主にとっても、実は家賃保証会社を利用するメリットがあるのです。
この記事では、家賃保証会社のメリット・デメリットに始まり、連帯保証人との役割の違い、法人契約で賃貸物件を借りるときのポイントまでを詳しく紹介します。
家賃保証会社とは
「家賃保証会社」や「賃貸保証会社」という言葉を聞いたことはありますか?
賃貸物件を借りようとする際に、以前は保証人を立てるように求められるケースが一般的でした。しかし、近年は保証人の代わりに、保証会社の利用を求められることが増えています。
この章では、家賃保証会社の仕組みや、保証会社が必要な理由、保証会社を利用するメリット・デメリットなど、家賃保証会社の基礎知識をご紹介します。
そもそも家賃保証会社とは何か?
保証会社は、「家賃保証会社」や「賃貸保証会社」と呼ばれることもあります。いずれも同じ意味で、入居者が家賃を支払えなくなったときに、代わりに支払ってくれる(保証する)会社が保証会社です。
会社によっては、未納の家賃だけでなく、退去後の原状回復工事の費用まで、保証の範囲に含まれていることもあります。物件を貸すオーナーからすると、保証会社が入ってくれることで、借主が払うはずだった家賃や諸費用を回収できないリスクを下げられるのです。
一方で、借主からすると、保証会社を利用すると保証料が発生するため、経済的な負担が増えてしまいます。保証料を節約したい場合は、親や家族など、信頼できる方に連帯保証人になってもらうことを選ぶ方もいるでしょう。
連帯保証人と保証会社のどちらかが必要になるかは、貸主の意向次第です。近年は、家賃保証会社の利用を義務付ける物件が一般的になってきました。さらに、連帯保証人と保証会社の両方が必要になるケースも増えています。
なお、会社名義で住所や事務所を借りる「法人契約」の場合も、原則として連帯保証人や保証会社の保証が必要になります。会社の代表取締役が、法人契約の連帯保証人となることもあります。
家賃保証会社を必要とする理由
では、なぜ家賃保証会社が必要なのでしょうか?
物件を貸す側からすると、一番のリスクは借主が家賃を支払わず、いつまでも出て行ってくれないことです。その期間は利益が発生しないばかりか、原状回復の工事も放棄された場合は、修繕やクリーニングにかかる料金が貸主の負担になってしまいます。そこで、保証会社に借主の信用を担保してもらうことで、万が一入居者の支払いが滞っても、入居期間中の家賃や原状回復の費用を回収できるようにしているのです。
また、物件を借りる側にも、家賃保証会社を必要とする人はいます。以前は連帯保証人を立てるのが一般的でしたが、最近は「親が高齢で現在は収入がない」「親戚や友人には頼みづらい」などの背景で、連帯保証人を立てるハードルが高くなってきました。このような理由から、連帯保証人を立てるという選択肢があっても、保証会社の利用を希望する方は少なくないのです。
家賃保証会社のメリット
借主からすると、保証料がかかることや、入居時に審査をされることから、保証会社に対してあまりよいイメージを持っていないかもしれません。「保証会社不要」「連帯保証人なし」の物件にメリットを感じる方もいらっしゃることでしょう。
しかし、物件を貸す側だけでなく、借りる側にとっても、保証会社が必要な場面があります。ここでは、家賃保証会社を利用するメリットをご紹介します。
<家賃保証会社のメリット>
家賃保証会社の利用で入居審査に
通りやすくなる
賃貸物件に入居する際に、避けては通れないのが「入居審査」です。借主の職業や収入の安定性、社会的信用などが審査され、物件を借りられるかが決まります。
家賃保証会社を利用する場合は、まずは保証会社が審査を行います。保証会社によっては、滞納などのクレジットヒストリーを信用情報機関で調査する場合も。クレジットカードやローンの滞納歴がなく、家賃を払えるだけの収入が安定していることが確認できれば、保証契約の締結が承認されます。
保証会社の審査を通過した入居希望者は、いわば「保証会社のお墨付き」です。その後、物件のオーナーが入居審査をする際に、保証会社がついていることで審査にプラスの印象を与えます。保証会社の審査に通っていれば、大きな問題がない限りは入居できると考えてよいでしょう。
なお、物件のオーナーや不動産会社の入居審査では、信用情報を照会することはありません。勤務先や勤続年数、収入を証明する書類など、限られた情報で入居者の支払い能力を審査することになります。勤務先の名前が知られていなかったり、個人事業主や自営業だったりする方は、なかなか審査に通らず、連帯保証人を立てるのに苦労することがあるようです。
一方で、特に信販系の家賃保証会社の審査では、借主の信用情報が照会されます。今までに、クレジットカードの支払い、ローンや奨学金の返済など、しっかりと信用情報を築いてきた方であれば、保証会社を利用することが審査にプラスの影響をもたらす可能性があるのです。
賃貸物件の家賃を滞納したときに
立て替えてくれる
入居しているマンションやアパートの家賃を滞納してしまったら、常時支払いに悩まされることになります。すぐに支払えない場合は、大家さんや管理会社から、頻繁に督促の電話や来訪があり、貸主に迷惑をかけることになってしまいます。
しかし、家賃保証会社を利用している場合は、基本的には保証会社が借主への督促を行います。大家さんやオーナーの方には、保証会社から未納分の家賃を立て替えて支払うため、滞納によってかかる負担を最小限に抑えられます。大家さんや管理会社にとっても、家賃の督促というのは時間と労力がかかり、できることなら避けたいもの。借主の方も、大家さんやオーナーとの直接のトラブルを起こさずに済むでしょう。
多くの方は、自分が家賃滞納することになるとは思っていません。しかし、急な病気や会社の倒産などで、家賃だけでなく転居費用や退去費用も払えなくなり、困ってしまう可能性もゼロではないのです。そんなとき、家賃保証会社の保証があれば、大家さんやオーナーに支払いについての迷惑がかかる心配はありません。
なお、保証会社が代わりに家賃を払ってくれるからといって、借主の支払いの義務が消えるわけではありません。保証会社の支払いは、あくまでも代位弁済、すなわち「立替え」です。保証会社は、オーナーに未納の家賃を補填しながら、借主に対しては支払いの督促を始めます。
最初は郵便や電話での連絡や、訪問での督促が行われます。また、保証会社との契約の際に「連帯保証人」を立てている場合は、その方にも督促の連絡が入るでしょう。これらの督促を無視したり、長期にわたって滞納したりすると、内容証明郵便や強制執行などの法的手続きに進むことになります。
なお、保証会社との交渉次第で、家賃の分割払いや利息カットなど、支払い条件の緩和が認められるケースもあります。保証会社からの連絡はスルーせず、今の状況を正直に明かして支払いの意思を伝えることが大切です。
家賃保証会社のデメリット
借主にとっての家賃保証会社を利用するデメリットは、保証料がかかることです。
連帯保証人を立てるだけであれば、本人同士の合意があればよいので、基本的には料金がかかることはありません。しかし、保証会社を利用する場合は、家賃保証料として、初年度で家賃の0.5~1か月分程度がかかります。また、翌年以降も、年に1~2万円の保証料がかかるのが一般的です。物件を見る際は家賃だけでなく、保証料や共益費などの諸費用も勘案して物件を選んでください。
また、特に信販系の保証会社の場合は、審査の際に信用情報が照会されます。信販系の保証会社とは、クレジットカードを取り扱う会社が、事業の一部として保証事業を運営している場合のことです。審査の際に、クレジットカードやローンの支払い履歴が参照されるため、例えば過去に長期延滞の履歴がある方などは、審査で不利になってしまう可能性があります。
連帯保証人とは
では、「家賃保証会社」と「連帯保証人」に違いはあるのでしょうか。
物件を借りる際は、ほとんどの場合、保証会社か連帯保証人のどちらかが求められます。場合によっては、その両方が必要になることも。ここでは、連帯保証人が必要な理由についてご紹介しましょう。
そもそも連帯保証人とは何か?
連帯保証人とは、借主による家賃の支払いが何らかの理由で困難となった場合、支払いの責任を肩代わりする方のことです。
賃貸ではなく、物件の購入時に住宅ローンを利用する際は、融資の対象となった土地や建物に抵当権を設定することができます。しかし、賃貸物件では担保となるものがないため、何らかのかたちで家賃保証する必要があります。その保証の形態が、人の場合は「連帯保証人」、会社の場合は「家賃保証会社」となるのです。
「連帯」という言葉が示すとおり、連帯保証人になると、支払いの責任は借主と同じになります。借主が家賃を支払えなくなった場合は、その分の家賃の督促が、連帯保証人にも行くことになります。また、物件の解約や退去費用の支払いについても、借主と同等の責任が生じます。
そのため、連帯保証人になるには、連帯保証人としての信用力が審査されます。印鑑証明、収入証明、住民票などの書類が求められ、収入の安定性や、社会的信用などが審査されます。支払いの責任を果たせる人物であると認められない場合は、別の連帯保証人を立てるか家賃保証会社を利用することになります。
連帯保証人を必要とする理由
連帯保証人が必要な理由は、家賃保証会社と同様、家賃未収のリスクを下げるためです。貸主は、家賃の支払いの遅延や延滞が起きたとき、連帯保証人に支払いを求めることができます。
しかし、保証会社であればすぐに未納分の家賃が補填されますが、連帯保証人の場合は相手が個人となるため、その限りではありません。借主と連帯保証人の経済状況によっては、何度も督促する必要が生じることもあります。
また、2020年の民法改正により、連帯保証人の制度が変更されました。
今までは、連帯保証人が負う責任の範囲に限度がなく、連帯保証人が過大な債務を負うことになる場合もありました。そこで、責任を負う最大の金額である「限度額」を契約時に設定し、それ以上は支払いの義務が生じないことになったのです。この民法改正で、連帯保証人を立てることが難しくなったこともあり、近年は連帯保証人よりも保証会社の利用が一般的になっています。
連帯保証人と家賃保証会社は必ず両方必要なのか?
物件によっては、連帯保証人も、家賃保証会社の利用も、どちらも不要な場合があります。この場合は、大家さんや不動産会社が独自に入居審査を行い、支払いの督促も管理会社が直接行うことになります。
一方で、必ず保証会社の利用が求められたり、連帯保証人と保証会社の両方が必要になったりするケースが多いのも事実です。保証の必要性については、物件ごとの決まりやオーナーの判断に従ってください。
なお、保証会社によっては、連帯保証人を用意することで保証料が安くなるメニューが用意されていることもあります。保証会社と連帯保証人の併用によって、保証料を抑えられる可能性があるのです。プランは保証会社によって異なるため、利用する保証会社の料金設定を確認してみてください。
その他、法人契約で賃貸物件を
借りるときのポイント法人契約、つまり会社の名義で事務所や住居、住居兼事務所を借りることもあるでしょう。法人契約の場合は、通常となにか違いがあるのでしょうか?
実は、事務所や店舗などの事業用物件の賃貸では、賃料の滞納率が数倍も高くなるとされています。そのため、保証会社側が代位弁済のリスクを下げるために、連帯保証人を立てることを求めるケースも少なくありません。
一方で、社宅などの居住用物件を法人契約で借りる場合は、その限りではありません。会社の規模によっては、保証会社と連帯保証人の両方が免除となる場合があります。法人契約の保証の条件は、会社の規模や信用力、賃貸物件の用途、そして最後はオーナーの判断次第となるでしょう。
なお、保証会社を利用する場合の保証料については、居住用であれば消費税はかかりませんが、オフィスや店舗など事業用の物件は課税の対象となります。
家賃保証会社と連帯保証人に関するまとめ
この記事では、「家賃保証会社」と「連帯保証人」の役割の違いや、家賃保証について知っておきたいポイントをご紹介しました。
近年は、連帯保証人を立てるよりも、保証会社を利用することを選ぶ方が増えています。保証会社を利用することで、保証料がかかるとはいえ、大家さんや連帯保証人となる方に経済的な負担をかける心配を減らすことができます。
保証会社によって、どの程度まで保証されるかは変わってきます。家賃や更新料だけでなく、退去費用や原状回復にかかる費用も保証される場合もあるので、入居契約の際に確認しておきましょう。
保証会社や連帯保証人が必要になるかは、大家さんや不動産会社の判断に委ねられます。法人契約などで企業の信用力が高ければ、両方が免除される場合もあります。
また、保証料は物件によって変わるため、入居の申し込みをする前に、保証についての条件も含めて物件を検討することをおすすめします。
家賃保証会社と連帯保証人に関するよくある質問
保証会社を利用しているのに、大家さんから家賃の督促が来ることはありますか?
ほとんどの保証会社が、家賃の督促も代行する仕組みでサービスを展開しています。しかし、中には家賃の回収については、大家さんや管理会社が行うという契約になっている場合もあります。
家賃保証会社は自由に選べますか?
一般的には、貸主や管理会社が指定する保証会社を利用します。