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【徹底解説】賃貸オフィスにおけるフリーレントについて

作成日:2024.5.9更新日:

「フリーレント」という言葉を聞いたことはありますか?

フリーレントとは、賃料が一定期間無料になる仕組みのことです。借主にとってお得なだけでなく、貸主にも物件が埋まりやすくなるというメリットがあります。

この記事では、フリーレントの仕組みや目安の期間、効果的な交渉方法までを詳しく解説します。

賃貸オフィスの「フリーレント」とは

オフィスや事務所の仲介における「フリーレント」とは、借り始めてからの一定期間、賃料が免除される特典のことです。

フリーレント期間が終わってからは、通常通りの賃料が発生します。とはいえ、一定期間の賃料が無料になるのは、借主にとっては大きなメリットです。

物件のオーナーは、空室のままになるよりは、何らかの方法で物件に入居してもらいたいと考えるものです。その方法の一つが、初期費用を抑えるお得な仕組みである「フリーレント」なのです。

賃料を引き下げてしまうと、ほかのテナントとの賃料の格差や、今後も賃料の水準を下げなくてはいけなくなる点が懸念されます。その点、フリーレントなら一定期間後は通常通りの賃料が支払われるため、物件の不動産価値を下げることはありません。

フリーレントとは

フリーレントのメリット

貸主にとっては、入居者が入りやすくなるため、空室を回避できるというメリットのあるフリーレント。ここでは、借主側が得られるフリーレントのメリットを、2つの観点からご紹介します。

メリット

二重賃料の回避

二重賃料とは、2つの物件の賃貸借契約が同時に有効であり、二重に賃料を支払わなければならない状態のことです。

では、どのようなときに二重賃料の状態になるのでしょうか。

お引越しをする場合には、まず借りたオフィスに受付や会議室等の造作をしなければなりません。この内装工事の期間中も、月ごとの賃料は発生します。ですから、転居前のオフィスに入居中の状態で、新しいオフィスの賃料も支払うという二重支払いをしなくてはならないということになるのです。

その点、フリーレントの特典がある物件なら、数か月の賃料は発生しません。その期間中に内装工事を終わらせれば、二重に賃料を支払うことなく新しい物件に転居することができます。

重要マーク重要

フリーレントで内装工事中の二重賃料を回避できます。

賃料のディスカウント

特に入居初期は、さまざまな初期費用がかかり、コスト面が気になる時期です。

    <賃貸オフィスの初期費用>

  • ・敷金
  • ・礼金
  • ・火災保険料
  • ・仲介手数料 
  • ・前家賃 
  • ・内装工事費
  • ・引っ越し代 など

そんな時期でも、フリーレント物件なら数か月分の賃料が無料。何かと物入りな事務所移転の時期に、支出を大きく抑えることができます。

フリーレントの交渉方法

オフィスビルに入居したいとき、「フリーレントのある物件を選びたい」と考える方は少なくないでしょう。

入居したい物件がフリーレント制度を設けていない場合、交渉次第でフリーレント可能になることがあります。ここでは、借主の側からフリーレントを持ちかける場合の交渉のポイントをご紹介します。

女性が提案する

まずは仲介業者へ相談してみよう。

不動産仲介業者は、借主と貸主の間を取り持つ、賃貸借契約のパートナーのような存在です。不動産関連の交渉に精通しているため、まずは仲介業者に「フリーレントで借りたい」がどう貸主と話し合いをするべきか相談しましょう。

相談のタイミングは、ある程度まで入居したい物件を絞った段階がおすすめです。借主が契約の意思を見せることで、オーナーが交渉に応じてくれる可能性は高まります。

ただし、契約が決まりかけてから、後出しでフリーレントを提案すると印象が悪いため、物件を絞り込んでからは「申込前~申込時」の間に相談しておくことをおすすめします。タイミングとしては、物件に申し込む前に一度、仲介業者に相談しておくとよいでしょう。

なぜフリーレントが必要なのか
理由を纏めておこう。

どのような理由でフリーレントを付けてもらいたいのか、理由を用意しておくと交渉が比較的スムーズに進みます。

例えば、内装工事で二重家賃が発生するため、その分のコストを抑えるためにフリーレントを交渉することもあります。あるいは、その物件に申し込みたいが、周辺相場に比べて賃料が若干高いため、フリーレントで賃料を抑えたいといった理由もあるでしょう。

よく見られるのが、今入居している物件の解約予告期間が長く、解約前に新しい物件の入居日を迎えるというケースです。貸主側は、入居までの空室期間が長くなることは避けたいので、解約予告期間の数か月を待つことはできません。そこで、代わりにフリーレント期間を設けることで、二重賃料分の負担を減らしてもらえる可能性があるのです。

上記のように、理由もあわせて仲介業者に伝えておくことで、貸主に対してスムーズに交渉を進めるための材料が見つかるかもしれません。

フリーレントの希望は「物件申込書」に載せよう。

フリーレントの希望は物件申込書に記載しましょう。物件申込書とは、企業名や連絡先、住所などの基本情報や、物件の用途、法人登記の有無などを記載する書類で、申し込みの際に提出します。この書類の備考欄などに、フリーレントを希望する旨を記載してください。

仲介業者と相談のうえで、フリーレントを希望する期間(○か月)、入居希望日などを記載するとよいでしょう。

また、契約年数を長くすることや、入居希望日を早くすることで、貸主側への印象をよくすることができる可能性があります。

貸主側が避けたいのは、空室期間が長くなることです。早い時期に入居し、長く契約してくれる方だとわかれば、フリーレントに応じてくれる可能性もあります。

交渉可能なフリーレント期間

フリーレントの交渉期間については、ビルの立地や面積によって左右されます。

またオフィスの空室状況に大きく影響をうけます。空室が少ない時には当然フリーレントを出さなくても借り手が見つかるため、ほとんどフリーレントがでないということも。 反対に景気が後退しているタイミングでは、オフィスの借り手が少ないため、フリーレント6ヶ月以上の物件をみかけることもあります。

一般的には1か月~3か月の間。

フリーレントの交渉可能な期間としては、物件によって異なるものも1つの指標として、1か月から3か月の期間といえるのでしょう。

どれだけ長く契約するかでも、フリーレントが受け入れられる期間は変わってきます。例えば、一般的なオフィスの契約期間は2年ですが、3年以上の長期で契約する予定の方であれば、多少の割引としてフリーレントを付けてもらえる可能性があります。

借主側の希望を伝えるとともに、貸主側の立場も尊重し、双方が納得のいくような条件になるように交渉を進めたいところです。

フリーレントの回答は入居審査完了後。

申し込みと同時にフリーレントの希望を出した場合、フリーレントがつくかどうかの回答がくるのは、入居審査が終わってからです。審査の内容に基づいて、契約条件が出されます。その条件に合意ができれば、無事に成約となります。

このタイミングで希望のフリーレントそのままで回答があることもあれば、貸主から折衷案がくることもあるでしょう。

なお、賃貸契約書にサインすると契約締結となり、そのあとで契約条件を変更することはできません。条件に納得がいかない場合は、契約を結ぶ前に相談しておきましょう。基本的には、審査が始まる前の申し込み時点で希望を伝えておくと、トラブルを減らすことができるでしょう。

また、必ずしもフリーレントの希望が通るとは限りません。人気の物件なら、「フリーレントなしで借りたい」という方がすぐに現れ、貸主側がフリーレントを付けるメリットがないのです。以下のような物件なら、フリーレントを交渉する余地があるかもしれません。

  • 空室が続いている
  • 主要駅からのアクセスが悪い
  • 築年数が古い
  • 同等の物件に比べて賃料が高い
  • 設備が老朽化している
  • フリーレントでオフィスを賃貸するときの注意点

    借主にとってメリットの多いフリーレントですが、いくつかの知っておくべきデメリットもあります。

    フリーレントを利用してお得に賃貸オフィスを借りるために、以下の点をチェックしておきましょう。

    女性が悩んでいる

    共益費や光熱費は支払いが必要。

    フリーレント期間中でも、ほとんどの場合、共益費や光熱費の支払いは避けられません。

    特に光熱費は、当然のことながら、自社が使った部分の費用は支払う必要があります。共益費の場合は、フリーレントの範囲内で賃料とともに免除になることもありますが、基本的にはフリーレント期間中も発生します。

    ちなみに、共益費とはオフィスビルに入居するテナントの「共同の利益」を維持するための費用です。共用で使う廊下、エントランスホール、お手洗い、階段、エレベーターといった施設の掃除や、定期的な点検などにかかる費用は、この共益費で賄われています。セキュリティ管理のために警備員を雇うビルもありますが、こういった費用も共益費から出ています。

    オフィスの共益費は、賃料の5~10%程度が相場です。共益費を払うことを考えても、フリーレントによるコスト削減のメリットは大きいといえるでしょう。

    フリーレント(賃料免除分)が
    違約金となる。

    多くの場合、フリーレントの特典を含む契約には、違約金についての条項が含まれています。

    例えば、3か月のフリーレント期間を付けて貸し出した物件を、3か月で解約されたとなると、貸主側に入ってくるお金はゼロになります。ですから、フリーレントにした分の利益が返ってくるように、「解約違約金」についての取り決めを行うのです。

    条項の内容は、契約によって異なります。一般的には、短期で解約した場合は、フリーレントで無料になった分の賃料を違約金として支払うという契約が多いです。契約後3か月のフリーレント期間を設け、2年以内に契約解除をした場合は、3か月分を違約金として支払う……というような取り決めがなさることがあります。

    注意マーク注意点

    フリーレントを交渉してつける場合は、違約金についてもしっかりと確認が必要です。

    長く入居するとかえって
    高くなることもある。

    フリーレントで免除される賃料は、あくまで最初の数か月分だけです。

    同様のグレードで、「賃料は高めだがフリーレント付き」の物件と、「賃料は安めだがフリーレントなしの物件」を比べると、どちらがお得かは入居期間によって変わってきます。

    例えば、A物件は賃料30万円でフリーレント2か月、B物件は賃料28万円でフリーレントなしだったとします。この物件に入居し続けると、以下のようにどこかの地点でB物件のほうがお得になります。

      <1年時点の支払額(累計)>

    • ・A物件:300万円
    • ・B物件:336万円

      <2年時点の支払額(累計)>

    • ・A物件:660万円
    • ・B物件:672万円

      <3年時点の支払額(累計)>

    • ・A物件:1020万円
    • ・B物件:1008万円

      <4年時点の支払額(累計)>

    • ・A物件:1380万円
    • ・B物件:1344万円

    この例では、入居から2年目まではフリーレントの恩恵が大きく出ていますが、3年目以降はB物件のほうがお得になっていきます。A物件の場合は、初期費用を抑えられるというメリットはありますが、長く入居するほどフリーレントでお得になった金額の割合は少なくなります。

    ですから、長く入居した場合の総支払額を考えると、必ずしも「フリーレントのほうがお得」とは限りません。会社の事務所移転の頻度や、周辺の同グレードの物件の相場を鑑みて、利益を最大限受けられるような条件の物件を選ぶとよいでしょう。

    自社の業態や人員計画を鑑みた時に、どのようなスパンでオフィス移転をするのか、また反対に長期的にオフィスを移転しないのか等を考慮し、フリーレント付きの物件を検討することが重要です。

    「賃貸オフィスのフリーレント」に関するまとめ

    2000年代に登場したフリーレントの仕組みは、今や住居用物件・事業用物件を問わず普及しています。オフィスビルを借りるうえでも、フリーレント付きの物件を選びたいと感じる方が多いのではないでしょうか。

    このコラムでは、フリーレントのメリットや、借主側からフリーレントを交渉する際のポイント、注意点などをご紹介しました。

    貸主側にとって、避けたいのは入居者が入らない「空室」の期間が続くことです。特に「建物が古い」「駅から遠い」「同等の物件に比べて賃料が高い」など、入居希望者が集まりにくいオフィスなら、フリーレントの交渉に応じてもらえる可能性が上がります。

    ただし、必ずしもフリーレントが可能になるわけではありません。「フリーレントなしでも借りたい」という希望者がいれば、そちらを優先されることもあり得るため、相場と比較しての見極めが重要です。

    また、フリーレントには一定期間以上は入居しなければ「違約金」が発生するなど、いくつかの知っておくべきルールもあります。このコラムを参考に、フリーレントの仕組みを上手に活用していただけることを願っています。

    賃貸オフィスのフリーレントに関してよくある質問

    クエスチョンマークレントホリデーとフリーレントの違いは?

    アンサーマークフリーレントに似た仕組みに「レントホリデー」があります。フリーレントは「契約開始からの3か月」のように、契約開始を起点にしてフリーレント期間が始まります。一方で、レントホリデーの場合は賃料の免除期間を分割し、毎年の一定期間は賃料が無料になります。例えば、3年で3か月のレントホリデーであれば、1年に1か月ずつの免除期間を設けることで、3年かけて3か月分の賃料が免除される仕組みです。

    クエスチョンマークフリーレント期間中の会計仕訳はどのようになりますか?

    アンサーマークフリーレント期間中は賃料の支払いがないため、実際のお金の動きと揃えて、フリーレント期間は「賃料についての仕訳なし」とすることが多いです。なお、発生した共益費などは別途仕訳する必要があります。