ビルのミニチュア、豚の貯金箱

事務所移転

LINE フェイスブック ツイッター

定期借家契約の中途解約は可能?
事業用物件を借りる際の落とし穴

作成日:2024.5.9更新日:

海外転勤などでしばらく家を空けたり、数年中に建物の売却を予定していたりする場合に、事前に期間を決めて物件を貸すことを「定期借家」といいます。

居住用だけでなく、事業用の物件が定期借家になっていることもあります。では、最初に決めた期限を迎える前に、何らかの事情で物件を出ることになった場合、定期借家の中途解約は許容されるのでしょうか?

一般的には、定期借家を中途解約するときは違約金が発生します。しかし、一定の要件を満たしていれば、違約金なしで中途解約できる場合もあります。

今回は、定期借家にまつわるルールから、メリット・デメリットや注意点まで、定期借家を利用するときに知っておきたいポイントを紹介します。

定期借家契約の中途解約は可能か?

入居当時は満期まで借り続ける予定でも、その後の環境の変化で、定期借家物件を中途解約しなくてはいけないこともあります。

基本的には、定期借家の中途解約は認められていません。やむを得ない事情で解約する際は、原則として違約金を支払う必要があります。

しかし、契約の内容や個々の状況によっては、違約金を支払わなくても、中途解約が認められることも。ここでは、中途解約で違約金が発生するケースと、例外的に違約金がかからないケースをご紹介します。

ビルモニュメント

定期借家契約の中途解約に
違約金がかかる理由

定期借家契約では、「3年間」「5年間」のように、賃貸借の期間が定められています。借主からすると、その期間はずっと住まなくてはならない点や、物件を気に入っても期限が来たら退去しなくてはいけないことから、少し不便に感じる契約かもしれません。その点をカバーするために、定期借家の賃料は通常の賃料よりも1~2割安くなるのが相場です。

しかし、この賃料の値引きは、契約で定められた期間は借り続けるという前提のもの。途中解約で中途半端な空室が出ると、貸主としては損失になるわけですから、契約内容によっては違約金を支払う必要が生じます。

違約金の金額は、こちらも契約によって異なりますが、「本来住むはずであった期間分の賃料」を支払うことになるかもしれません。とはいえ、残りの契約期間がかなり残っている場合は、「違約金として数年分の賃料を支払う」というのは現実的ではなく、実際は賃料の6か月~1年分程度の金額が上限となることが多くなっています。

支払い関連のトラブルを避けるためにも、定期借家契約を結ぶ際は、違約金条項をよく確認しておきましょう。そして、定期借家がご家庭の状況や事業計画に適しているかどうか、慎重に検討する必要があります。

なお、定期借家の期限を過ぎても、まだ同じ物件に住み続けたいと思うこともあるでしょう。そんなときは、オーナーとの合意が取れていれば、再契約が可能なこともあります。オーナーが合意している場合は、契約の延長による違約金は発生しません。

注意マーク注意点

定期借家を中途契約する際は違約金が生じることがある

例外として中途解約が認められるケース

原則として、定期借家の中途解約は認められません。契約期間が終了する6か月~1年前に、貸主から契約期間満了の通知があり、借主はその時期に合わせて物件を解約する必要があります。

そのため、契約期間の途中で物件を出る場合は、違約金を支払うことで、例外的に中途解約を認めてもらうことになります。

しかし、実はすべてのケースで違約金が発生するわけではありません。例えば、契約時に解約についての「特約」を結んでいる場合は、その特約の内容次第で、違約金なしで中途解約できるかもしれません。

また、解約予告の時期や解約の理由など、法律で定められた一定の条件を満たしている場合も、違約金がかからない可能性があります。ここでは、中途解約で違約金が必要な場合と、そうでない場合について、それぞれご紹介します。

貸主に違約金を支払って解約する

定期借家を解約する場合は、違約金を支払うことで、中途解約できるケースがあります。

多くの場合、入居時に結ぶ契約の中に、違約金についての条項が含まれています。そちらに記載されたルールに従い、違約金を支払うことになります。

また、解約の理由がやむを得ない場合は、管理会社やオーナーとの相談次第で、違約金を減額してもらえることもあります。ただし、定期借家の中途解約は、そもそも貸主にとっては例外的な対応となります。違約金の金額が法外でない限りは、契約に従って違約金を支払うのが順当です。

解約権留保特約を付けて定期借家契約している

ここまで、定期借家の中途解約には、原則として違約金が発生することをご紹介しました。

しかし、定期借家契約の中に「解約権留保特約」が含まれている場合は、違約金を支払わずに中途解約できるかもしれません。

解約権留保特約とは、契約期間中の中途解約を認める取り決めのことです。事前に解約の申し入れをすることで、違約金を払わなくても、中途解約が可能になります。

ただし、定期借家の解約権留保特約については、法的にもさまざまな見方があります。専門的な内容となるため、「特約があるから必ず解約できる」とは限りません。オーナーや管理会社と良好な関係を保ち、事前に特約の内容を確認しておくとよいでしょう。

その他

そして、以下の要件をすべて満たす場合は、解約についての特約を結んでいなくても、違約金を支払う必要はありません。

  • 事業用ではなく、居住用に借りている場合
  • 借りているスペースの床面積が200㎡未満の場合
  • 転勤、療養、親族の介護などのやむを得ない事情により、
    継続的な居住が困難な場合

これらの要件を満たし、1か月前までに解約の申し入れをした場合は、違約金を支払う必要はないことが法律で決められています。

一方で、事業用の物件を定期借家契約で借りている場合は、上記の解約権を行使することはできません。その場合は、契約書に記載された違約金条項や、解約権留保特約に従って、中途解約の手続きを進めることになるでしょう。

定期借家契約の
基礎知識について

そもそも、定期借家とはどのような仕組みなのでしょうか。
ここでは、定期借家の物件を賃貸する際に知っておきたいポイントをご紹介します。

賃貸借契約書

定期借家とは?

定期借家とは、限られた契約期間が設定され、期間の満了後は、原則として契約が更新されない物件のことです。

つまり、「1年」「3年」「5年」のように決められた期間が終わったら、物件を出ていく必要があります。また、契約期間中の解約は、特定の要件を満たす場合を除いては、基本的には認められません。

定期借家に対して、1年などの契約期間ごとに更新されていく賃貸物件のことを「普通借家」といいます。通常の賃貸契約を「普通借家契約」というのに対して、定期借家の賃貸契約は「定期借家契約」と呼ばれます。正式名称で「定期建物賃貸借契約」と呼ぶこともありますが、どちらも同じ意味を指す言葉です。

定期借家契約で借りるメリット・デメリット

賃料の安さなど、メリットの多い定期借家契約ですが、利用するうえではデメリットも知っておきたいものです。ここでは、借主の側から見た定期借家のメリットとデメリットをご紹介します。

定期借家契約のメリットとは?

  • 賃料を安く抑えられる
  • 物件の幅が広がる

まず、定期借家の最大のメリットは、賃料を安く抑えやすい点です。

定期借家の賃料は通常の賃料よりも1~2割安くなることが多いです。そのため、短期の入居先を探している方や、一時的に賃料を抑えたい方にとっては、非常にお得に感じる物件となるでしょう。また、入居時の礼金も「なし」になるのが一般的で、毎年の更新料もかかりません。

また、定期借家を視野に入れることで、賃貸物件の幅が広がります。

貸主の中には、さまざまな事情で「一時的に物件を貸したい」という方がいます。転勤などの理由で、一定期間だけ貸し出される物件を「リロケーション物件」といい、良質な住宅をお得な賃料で賃借できるため、人気があります。

長く住み続ける予定がなく、2年や5年といった限られた期間で入居したい方にとっては、定期借家はメリットの多い物件となるでしょう。

定期借家契約のデメリットとは?

  • 原則として中途解約はできない
  • 期限が来たら解約の必要がある

定期借家の賃貸では、あらかじめ契約期間が定められています。その期間中の中途解約は、原則として認められていません。ただし、前述した要件を満たしていたり、違約金条項や解約についての特約が定められていたりする場合は、状況に応じて解約が可能になることもあります。

また、入居している物件を気に入って「継続的に契約したい」と思った場合も、オーナーが合意しない場合は否応なく解約することになります。

オーナーと入居者の双方が再契約に合意した場合は、改めて賃貸借契約を結びます。なお、再契約の際はオーナーから賃料の値上げを提示されることが多く、これに応じるかは交渉次第となりますが、合意できない場合の再契約は難しくなることでしょう。

定期借家契約の注意点について

定期借家を再契約する際は、契約を延長するのではなく「新しい契約を結ぶ」という扱いになります。再契約の際に契約内容や条件が変わる可能性があるので、しっかりと契約書をチェックしておきたいところです。

再契約の際は、事務手数料や管理会社への仲介手数料など、改めて初期費用がかかります。なお、敷金については、初回契約時の敷金を引き継ぎ、退去時に清算する場合がほとんどです。その他、仲介手数料も割引になるなど、費用の多寡は大家さんや管理会社の判断に委ねられます。

また、借主は契約満了を迎える前に、再契約できない場合のことを考えておかねばなりません。

ちょうど満了のタイミングで転居しなくてはいけないので、物件探しに苦慮することもあるでしょう。再契約を希望するか否か、あるいは次の入居先はどこにするかを早めに考え始め、転居の準備を進めておくとよいでしょう。

注意マーク注意点
  • ・再契約の際は改めて初期費用がかかる
  • ・解約前に転居先を探しておく必要がある
  • 定期借家契約の途中解約は専門家に一度ご相談下さい

    不動産関係の法律は、専門家でなければ分かりにくい点も多く、解約や退去時の支払いに悩むことがあるのではないでしょうか。

    特に定期借家契約の解約では、特殊な賃貸借契約であることから、迷ってしまう場面もあることと思います。もしオーナーや管理会社とのトラブルに発展したら、一度専門家に相談されることをおすすめします。

    前述のとおり、定期借家を中途解約する場合でも、違約金を支払う必要はないかもしれません。また、違約金を支払うにしても、その金額に合理的な理由がない場合は、満額の違約金が認められないケースがあるのです。

    例えば、4年間の契約期間を設定したにもかかわらず、たった10ヶ月で退去することになった事例があります。「期間満了日までの賃料・共益費」が違約金として決められていたため、一見すると残りの3年2か月分の賃料を払わなくてはいけません。しかし、裁判の結果として、この違約金はあまりにも借主に不利であることから、1年分の賃料・共益費以上を支払う必要はないという判決が下されました。

    このように専門家の力を借りることで、「支払わなくてよいお金を泣く泣く支払う」という可能性は低くなるでしょう。中途解約の手続きや違約金の支払いで疑問を覚えたときは、不動産に詳しい方や、法律の専門家の意見を聞いて判断するようにしましょう。

    専門家と相談

    定期借家契約の中途解約
    に関するまとめ

    定期借家には、賃料の安さにメリットがありますが、中途解約は基本的には認められません。

    ただし、契約時に定められた違約金を支払うことで、契約期間中の解約が容認される場合があります。また、中途解約についての特約がある場合や、一定の要件を満たす場合には、違約金を支払う必要がなくなります。解約についてのルールをよく確認し、支払わなくてよいお金を払わないように注意しましょう。

    なお、定期借家の契約期間中に家賃が払えなくなると、入居した期間の家賃だけでなく、解約の違約金まで払わなくてはいけなくなります。事業用の物件で定期借家を利用する場合は、十分に支払いの見通しがついていて、契約満了まで同じ場所で経営を続けられるかを判断しなくてはいけません。

    定期借家契約の中途解約
    に関するよくある質問

    クエスチョンマーク定期借家の契約でも「中途解約権の行使」は可能ですか?

    アンサーマーク 中途解約権とは、特約を結んでいなくても、契約を途中で解約できる権利のことです。定期借家の場合は、以下の場合のみ中途解約権が認められます。 事業用ではなく、居住用に借りている場合 借りているスペースの床面積が200㎡未満の場合 転勤、療養、親族の介護などのやむを得ない事情により、継続的な居住が困難な場合

    クエスチョンマーク解約についての特約を定めている場合、いつまでに解約の申し入れをすべきですか?

    アンサーマーク解約権留保特約に、解約申入期間についての取り決めがある場合は、そちらの特約に従ってください。特に決められていない場合は、3か月までに解約を申し入れる必要があります。